乳児保育シリーズ第二回、今回は感覚運動遊びです。

前回、感覚入力、刺激の入力が大事であるという話をしましたが、素材に触れるということをメインに扱っていました。今回は動く遊びとしての感覚遊びを取り上げてみたいと思います。

 

公園の大型遊具はどんどん活用しよう

これは2歳児にぴったりの難易度のジャングルジムのように遊べる大型遊具です。感覚遊びというのは触覚だけではありません。ここでは高いところに登ることでの高低差を感じる感覚、重心移動、握る感覚、手足をバラバラに動かして落ちないように移動するというボディイメージや運動の組み立ての力を鍛えることができます。

この日は私も参加していましたが、帰る時間だから帰ろうと声かけても、なかなか帰ろうとしませんでした。もっと遊びたいという場合には、その遊びを欲しているということです。遊びがその子の課題とマッチしていたという解釈ができます。もちろん、その遊びを欲していてもすぐに帰る用意ができる子もいます。気持ちの切り替えと言われる能力ですね。

 

不安定な足場

0歳児ではジャングルジムに登ることはできません。このように、不安定なところを歩行するというのも感覚運動遊びの基本です。わざと傾きを作ったり柔らかい素材を用意して不安定な足場を作ります。子どもたちがその上を歩く遊びです。柔らかいので転んでも怪我をしません。安全面も考慮された遊びです。

傾いたところを歩くことを意識すると乳児の歩行や運動能力が向上していくのでオススメしています。子どもって坂道とか少し高いところとか歩くの好きですよね。それは感覚が刺激されて「楽しい!」と感じるからです。感覚運動遊びなんですね。

 

0歳児だってブランコに乗れる

園庭にこのようなブランコを設置してあります。「揺れる」という感覚入力が必要だったので作りました。0歳児では漕いだり揺らしたりできませんが、乗ることはできます。あまり激しく揺らすと「乳幼児突然死症候群」の心配が出てきますので、脳を激しく揺らすことは絶対にしません。乗せるだけです。

結局、気持ち良さそうに寝てしまいました。ブランコというよりハンモックですね。眠れるということは「心地よい」と感じているということです。脳が喜んでいます。こういった体験は情緒の安定につながります。園生活の中で「心地よい」と感じる瞬間を作っていくことは大切な要素です。

 

運動選択遊び

木馬などのロッキング遊具も使用します。重力の傾きを感じて姿勢を真っ直ぐにする感覚、揺れることで体が傾き落ちそうになるので姿勢を戻したり取っ手を強く握るという感覚と運動、純粋に揺れることを心地良く感じる感覚。

運動と合わせて感覚入力をたくさんすることができます。当園では「運動選択遊び」と呼んでいますが、このようなコーナーをいくつか設けて、自分の好きなところに行って遊ぶことができる時間を設定すことがあります。公園や園庭に行くだけでは得られない経験を室内で積むようにしているのです。

 

運動選択遊びその2

階段を登って降りるコーナーとトンネルのコーナーです。段差の昇降が良いことは先ほど説明していますのでトンネルの解説をします。

ハイハイをあまりしないですぐに歩行するタイプのお子さんがいますが、ハイハイをすることも発達の上では大事な段階です。ハイハイは腕や肩や首や背中周りの運動機能の発達の練習になるからです。そこで、あえてトンネルなど歩行できない場所を作ります。

周囲の景色が遮断された中に「入っていく」というのも面白い体験になります。そして「出口から出る」ことも「いないいないバァ」に近い感覚です。「いないない」で視界から消えたものは存在が消えたのではないかと不安を感じた後、「バァ」で再び現れて安心する。乳児にとって見えなくても存在は消えずそこにあり続けるという体験は、後に愛着対象から離れても活動できる「安心感」の獲得につながります。

 

乗り物に乗るという感覚運動

乗り物に乗ることも子どもは大好きですが、自分の歩行とは別の方法で身体が移動していくという感覚が面白いわけです。姿勢を保持したまま、足で地面を蹴って前へ進む。その際にハンドルの向きで進行方向が変わる。スピードの変化も感じます。何度もやるうちに法則性を理解し、運転も上手くなります。

 

ダイナミックな動きが学べる

積む、運ぶ、またぐ、乗る、渡る、押す、引っ張る、支える。こういった大きなブロックみたいな遊具があると普段なかなかできない感覚や運動スキルを鍛えることができます。

このブロックは結構高かったんですけど、買ってよかったおもちゃランキングで上位に入りますね。

 

4歳児のプロジェクト保育ではこのビルディングブロックを使用していましたが解説はストーリー分析だったんで感覚運動視点では何も説明していませんでした。遊びを運動面から解釈すると、また違った視点で理解することができて面白いんですよね。遊びの観察も、楽しみ方は無限大です。

 

リトミックも毎日やってます

ピアノの音をよく聞き、それに合わせて体の動きを変える。これも感覚運動遊びの一種と言えるでしょう。1歳児クラスの6月なんでちゃんと揃ってませんが、意欲的にやっています。奥では0歳児クラスが「見て」学んでいます。観察遊びと言われる状態です。

どういう動きなのか、どう動いているのか等をじっと観察しているのです。そして体が自然に踊り出しています。ここまでくれば、できるようになるまで後少しです。

 

電車でGO

電車みたいに連なって歩く、こんな光景も保育園で見られたりしますが、これも両手で前の人を掴みながら、ぶつからないように距離感や足の動きを意識して後ろの人に引っ張られても倒れないように姿勢保持して歩く。なかなか高度な運動ですね。

サラッと活動の合間合間にこういった運動を入れています。チリも積もれば山となる。こういった地道な日常の工夫が、後で生きてくるのです。

 

いかがでしたでしょうか。あえて専門的というか教科書的な感覚運動の説明は避けました。なんとなく、いろんな感覚と運動を組み合わせて統合して遊ぶのが良いんだな、くらいの理解で大丈夫です。

乳児はとにかく感覚と運動機能を鍛える方が良いです。ここで基礎を作っておくと身体を自由に動かすことができるので345歳児になった時に遊びに入り込めるようになるからです。

例えば、足腰がしっかりしていて長時間しゃがむことができなければ砂場での遊びが深まりません。しゃがむとと疲れるのですぐに移動したり、お尻をつけて遊ぶので移動も向きの変更もしなくなったり、椅子があるところでしか遊べなくなります。飽きっぽいと言われる子の中には感覚運動のところで躓いていることが結構あります。

乳児保育は地味ですが重要なのです。

 

乳児シリーズは後1、2回続きます。今日はここまでです。