ま幼児の遊びの紹介が続いていたので、012歳児つまり乳児保育についての解説をしてみたいと思います。

乳児保育シリーズ、初回は素材感触遊びです。

 

スポンジもおもちゃになる

大人のよくある誤解の一つに、「子どもはおもちゃで遊ぶ」というものがあります。例えば人形やミニカーで遊ぶというイメージです。

しかし、この日は「スポンジを様々な形や大きさで切ったもの」「トイレットペーパーの芯」「ラップの芯」で自由に遊んでいます。子どもにとっては何でもおもちゃになるのです。

よく考えれば、ずっと昔、例えば狩猟社会だった縄文時代に「作られたおもちゃ」はなかったんじゃないかなと思うんです。子どもたちは道に落ちている石や枝、草花や虫などで遊んでいたはずです。

子どもにとっては目の前にあるもの全てがおもちゃになるんですね。

 

廃材の再利用

さらにテープの芯、箱ティッシュの空箱、ゼリーや豆腐の容器も見えますね。保護者の方に集めていただいた廃材は、幼児の工作だけでなく乳児保育の素材遊びにも使わせていただいています。

 

全身で感じる

指先で触るというだけでなく、全身で感じることも大切です。この場合は頭にかかっている梱包材(プチプチ)の感触を頭と指先で感じつつ、視界が遮られます。ここで触覚刺激と視覚刺激が融合された「体験」になります。こういう半透明のものを通すとこんなふうに見えるんだ、という気付きにもなるでしょう。

 

赤ちゃんだからこそ感覚遊び

小麦粉粘土です。万が一、口に入れてしまって大丈夫ということで保育園でよく使われる素材です。人は経験したことがないことって不安を感じるんですね。予測できないからです。初めての体験に泣いてしまっています。経験を増やすことで安心して遊べるようになっていきます。

乳児保育は様々な経験を積ませていくことがとても大切です。いつも同じような既製品のおもちゃでしか遊ばない環境では子どもの成長は促進されません。

 

2歳児ではより高度な素材遊びに

これは寒天遊びです。色をつけた寒天で遊んでいます。お皿やレンゲ、包丁がわりの牛乳パックも用意しています。自分で触ったりちぎっても良いし、お皿にレンゲで移動させても良い。2歳児は生活習慣の確立の時期なので、食具の使い方と連動した遊びを設定することが多いです。その中でも遊び方は子どもが決めていきます。

つまり、自由遊びなんだけど「用意した道具と素材」を用いて遊ぶだけで、食具の使い方の練習にもなる。これが保育の計画です。何も考えずに遊ばせているわけではありません。しかも感覚遊びも兼ねています。

 

毛布って気持ち良い

シーツ、毛布、フリース、大きなぬいぐるみなど布の素材を使った布遊びです。ここでは感触だけでなく「暖かさ」を同時に感じることができます。また「包まれている」感覚や、頭からかぶって「真っ暗になる」感覚や視覚刺激も経験します。

遊びというと目の前にあるものに対して手を使って遊ぶイメージになりやすい大人では、なかなか気がつかない視点ですね。

素材感覚遊びのポイントは感覚の統合です。「触覚」と「視覚」でも良いし、「硬い」と「冷たい」でも良いし、「足裏」と「指先」でも良い。複雑な刺激を体内に入力して、刺激情報を統合する。これを繰り返すことが大切です。

 

新聞紙遊びは乳児保育の基本

新聞紙は素材感覚遊びでよく使われる素材ですが、安価であるというだけでなく、遊びが広がりやすいという特徴を持っています。畳む、千切る、引っ張る、丸める、持つ、見る、読む、触るなど、子どもが興味を持った時に選択できる行動が多いのです。

新聞紙を出せば、その子の何かしらの興味を引き出しやすく、運動能力の向上という点でも優れた素材です。

 

素材遊び(床)

いろんな種類の素材を床に貼り、その上を歩いて足裏で感じたり、手で触ったり寝転んだり。人工芝や緩衝材、ボール紙などできるだけ違う感触のものを選びます。

この遊びは私が教えたものではなく、保育士から提案があったものです。基本さえ理解すれば遊びの環境を保育士が工夫していきます。このように保育士の成長を感じることも私の喜びの一つです。この園に関わる人が全員成長する。それを目指しています。

もちろん、これを読んでいるみなさんも何か得るものがあるんじゃないかと思います。ここは、大人も成長する保育園です。

 

ちなみに足裏の刺激も発達に重要なので園内では裸足保育となっています。

 

散歩も感覚刺激になる

散歩など外遊びも広い意味では感覚遊びの要素が入ってきます。歩いているときの足裏にフィードバックされるアスファルトの硬さと土の柔らかさ。風の強さによる抵抗、突然降ってくる雨も感覚刺激です。保育園で外遊びが必要なのかという議論がありますが、必要です。人工物の中にいるのと自然の中にいるのでは、感覚入力の数が明らかに違うからです。外遊びは大切です。

 

あまり知られていませんが、子どもの発達には感覚刺激が必要と言われています。感覚刺激の情報を脳内で統合することで、外界を正確に把握し、自分の身体を上手に動かすことができるようになります。

感覚統合が悪い場合、「かんしゃくを起こしやすい」「食べ物や服の好き嫌いが多い」「じっとしていられない」「勉強に集中できない」「運動が苦手」「漢字を覚えることが苦手」など、あまり好ましくない発達をしてくことが知られています。

そこで、当園では0歳児クラスから素材遊びや感覚統合運動を行っています。室内でも外でも様々な感覚を養う。それが乳児保育では重要なのです。