鼓笛隊の準備は七夕まつりが終わった7月から始まりました。

 

当園の活動はほぼすべて園長の監修が入っていますが、唯一私の管轄外だったのが年長5歳児クラスの運動会で披露する鼓笛隊です。

私はもちろん鼓笛なんてやったことないし、吹奏楽経験者でもないし、なんなら楽譜も読めません。

そんな素人の私が主担当となって子どもたちと一緒に1曲作り上げて運動会で披露する。なかなかスリリングで面白いなと思って「今年は園長がやります!」と保育士に宣言しました。パソコンに向き合っているより、子どもと一緒にいたいんですよ、園長も。

 

1人で太鼓を叩くところをカメラをセットして自撮り(恥ずかしい)

とりあえず1人で太鼓を叩くところから始めました。小太鼓、中太鼓、大太鼓の音の違い、簡単なリズム打ちを試す。あえて昨年度までの発表は参考にしない。太鼓を叩くのって結構楽しいなぁとか思いながら夜に1人で太鼓を叩く。

 

何事も挑戦することが大事なんだと思っています。そもそも指導だけする立場の人間は実際にやるわけじゃないから下の人になんとでも言える。偉そうに言うだけの園長や指導者はいくらでもいる。むしろ、園長自らが担任と同じ立場に降りていき、締め切りに追われ、本番までに完成させるというプレッシャーに打ち勝ち、子どもと喜びを分かち合うところを保育士に見せることは大事なことかなと思ったんです。保育士の気持ちがもっとわかるかなぁとか、かっこいいこと言ってましたね。

 

いけると思ってたんです。はい。この時は。

 

これが大変でした。園長だから突然の電話や来客の対応の対応もあるし、行政からの書類の締め切りは迫るし、園全体の細かいことの判断をしなくてはいけない。これが練習時間だろうがなかろうが、突然入ってくる。コロナの対応もしなくてはいけない。

 

気分はカリスマ作曲家

担任が選んだ曲は某探偵アニメのメインテーマ。これに全パートの叩き方を考えていかなければならない。

 

保育士を何人か集めて、楽器を渡し、フリーセッションから始めました。気持ちの良い叩き方、リズム。合わせた時の心地良さ。グルーブ感。みんなで演奏するって楽しい。

 

バンドで一曲作る感じでやりました。フリーセッションを参考にして後日1人でイントロからAメロ、Bメロ、Cメロ、エンディングの各楽器の叩き方を決めていく。決めたらiPadで自分で演奏して打ち込んで聴いて、また修正する。この繰り返しです。

 

こんなことやったことないんですけど、まぁ、こんなもんかなぁというノリで。細かいところは子どもたちと決めていけば良いんです。指導するというより、子どもたちと一緒に作ると思っています。

 

みんなが助けてくれる

リズムが浮かなばないので保育士に聞いてみたり、吹奏楽経験者からマーチングのテキストを借りたり、動画やインターネットで調べたり。

 

経験者からすれば「そうじゃない」「間違っている」と言われると思うんですけど、別に鼓笛やマーチングを子どもたちに教えているわけじゃなく、あくまでもこれは「楽器遊び」です。ここは保育園ですから。某探偵アニメの主人公のセリフで「真実はいつも一つ!」というのがありますが、別に真実じゃなくて良いこともある。

 

私の中での真実は「みんなで楽しく保護者の方に1曲披露する」ことだけです。子どもに教えることが目的じゃない。一緒に成長することが目的です。

 

チューニングもわからないので試行錯誤して1人でやっていたら、自然と保育士が集まって手伝ってくれました。ありがたい。みんなが助けてくれる。園長が助けてもらうなんてカッコ悪い、なんて思わないです。上も下もない。子どものために力を合わせたいと思っているだけですから。

 

おしりタンバリン is ロックンロール

最初はリズム感を養うために、タンバリンなどの打楽器を使って遊びます。自由に叩いたり、私の叩いた通りに同じようなリズムで叩いたり、お友達が叩いたリズムを真似して叩いたり。

楽しくないと意味がないので、おしり、お腹、足などで叩くのも入れて笑いながら行います。テンションが上がって奥の子達は立ち上がって踊り出しています。良いですね。

 

音楽は覚えるものじゃない。感じるものだとロックミュージシャンが言っていたのを思い出しました。本当、その通りだと思います。

 

第一印象からあなたに決めてました

タンバリンに慣れてきたら、自分が気になる楽器を自由に選んで叩いてみます。どういう音が出るのかな。持ったら重いかな。やってみないとその楽器の良さがわからないかもしれないので、全部試してみます。写真は一番最初に選んだ楽器です。本番と同じ楽器の子もいれば、違う子もいますね。

 

年長さんへの憧れ

練習を見学する3歳児クラスの子どもたち。ままごと遊びよりも練習を観るほうが楽しいみたいです。5歳児クラスの子どもだけが行う鼓笛。年長さんへの憧れが芽生えています。「早く年長さんになりたいな。」と話していました。これが合同保育の良いところですね。

 

2人を見守る担任の優しい眼差しをご覧ください

ある程度リズム遊びや全ての楽器に慣れたところで、いよいよパート決めです。意欲が大事ですので、子どもたちで決めてもらいます。ちゃんとした音楽の指導者だったら適性とかで選んでしまうんでしょうけど、これは上手い下手じゃない。子どもたちで決めていくプロジェクトです。

 

ある程度決まったところで指揮者が被りました。希望者が最終的に2名になり、子どもたちが選んだ決め方が「じゃんけん」。女の子の方が勝って大喜び。男の子は静かに泣き始めます。しばらくして練習に進めようと私が思ったところで、女の子の方が指揮者を男の子に譲りたいと言い出しました。担任も本当に良いの?と何度も確認しましたが、力強く「うん。」と頷きました。

 

その後、女の子の方は違う楽器へ。すると元々そこの楽器にいた子がまた別の楽器へ移動し、全員のパートが一気に決まってしまいました。

 

自分たちで問題を解決する力をつけるのがプロジェクト保育のねらいですが、ここまで子どもたちだけで決まるとは思っていませんでした。令和3年度のブログを読んでもらえばわかると思いますが、結構それぞれ自由に遊んでいた子達です。一年前は「猫ちゃんごっこ」とかしてましたからね。子どもの成長は早い。

 

譲った子と譲られた子が顔を見合わせて笑うという素敵な写真

パートが決まり、実際に行進するところをやってみます。みんな笑顔ですね。見ているこっちも笑顔になってきます。

 

パートが決まったのがもう8月の後半です。本番まで2ヶ月ありません。10月初旬のリハーサルで完成していることを考えるとあと一ヶ月で仕上げる必要があります。やったことがないので、これで間に合うのかもこの時の私はわかっていません。でも子どもたちが意欲的で楽しそうなので、何も不安はありませんでした。子どもの可能性を信じているからです。

 

さて、今回は7月の準備期間と8月の練習の様子をお伝えしました。次回は9月から本番までを紹介させていただきます。