345歳児合同プロジェクト「お別れ会」その6です。

 

前回は3歳児と4歳児の様子を見てもらいましたが、今回は5歳児です。

 

ろくろ首革命で何をしても良いんだという価値観に変化し、うさぎ革命で絵本作りに遊びを加えるという意識を共有できた。そして前回は一緒に作るという仲間意識を強くしたところまでを紹介してきましたね。

 

 

#11

 

製作は今日で仕上げです。

 

リーダーからサポートへ

お店屋さんの骨組みを作るなど、普段の遊びの中でも周囲にリーダーシップを発揮するタイプの子でしたが、右下の子の制作の手伝いをしています。みんなで一つのものを作り上げるときに、自分が必ずしもリーダーになる必要はない。自分がやりたいことだけでなく、みんなのやりたいことを手伝いたい。そういった変化が感じられます。

 

 

独り立ち

一緒に絵本を作ったり、うさぎを作ったり、お店の準備をしていましたが、今日は「1人で作りたい。」と最初から制作意欲が高く、集中を切らすことなく一気に1人で絵本を一冊作り上げてしまいました。

 

1人でも楽しいし、お友達と作るのも楽しい。両方の楽しさをわかっているようです。お友達に合わせて本心を押し殺すのではなく、一緒にやりたいときはやるし、1人で集中したい時は集中する。割と理想の関係性じゃないでしょうか。

 

 

人の目を気にしない

今までは「みんながどういうふうに作っているか気になる・・・。」という発言に出ているように、周囲と自分の関係にすごく気を使っている様子が見られていました。一冊を書き上げるのに何日もかけていたのですが、この日は人の目を気にしないで描きたいように描いて1日で一冊を完成させてしまいました。

 

作品に集中するということは自分自身に向き合っているということです。幼児さんにいうセリフじゃないかもしれませんが、これは人間的な成長です。コミュニケーションに変化が出てくることが期待されます。

 

 

質の向上

こちらは絵本の完全コピーを目指す左の子に触発されて、他の2人も色鉛筆でコピーを目指しています。こちらはこちらで別の「楽しさ」が広がっているようです。

 

ところが準備は今日で終わりなのに全ページのコピーまでは間に合いそうにありません。

 

「まぁ、このページはなくてもいいか」「ここは簡単でいいや」

 

なんと全体の完成のために重要度が低いところの手を抜くという現実的で効率的な対策を取っています。全部完璧にコピーすることを優先して結局時間内に終わらないという結果にはなりませんでした。これができない大人も結構いますからね。凄いです。

 

 

最後までやり抜く力

前回お手伝いをすることで絵本を作って発表した二人ですが、本人は最後の手直しをしています。もう1人はパソコンを作っています。写真には写っていませんが、ちゃんとマウスまで作っていました。

 

絵本が完成した人はお店の準備を自然と行い、絵本が終わっていない子は自分の作品に向き合う。本番に向けて、やるべきことをそれぞれがやっているようです。

 

 

何をしているのでしょうか

自分の作品が終わっているので、ずっと今日はこの場所で製作をしていました。お店の何かなのでしょうか。本人の中にはきっと何か考えがあるはず。これがどういうふうに他の子の考えや準備物とつながっていくか楽しみですね。

 

 

遊びの融合

準備の時間は終わり、絵本やお店系のアイテムを使って本番に向けてどうするのか話し合う時間になりました。

 

しかし、話し合わずに作ったものを使って遊び出す子どもたち。まぁ、自分で作ったのなら遊びたいですよね。成長したとはいえ、まだ幼児さんですから。

 

すると「遊ぶ時間じゃないよ!」「話し合うんだよ」と言い出す子たちが。

 

結局遊びたい流れが強くて遊びが止まりません。うーん。惜しい。

 

絵本とお店のアイテムの遊びが少しずつ融合していき、絵本の読み聞かせと本屋さんという世界観がみんなの中で共有されていきました。話し合いはしていなくても、どのように本番を行うかの下地ができつつあるのです。会話はしていないけど、対話をしている、というやつですね。

 

 

遊びの分断

いい感じだと思うと、大体こうなるんですよ。うまく遊びがはまらなくていじけて端っこに行く子。ふてくされて椅子の上に寝る子。話し合いたいのにみんなが言うことを聞いてくれないので諦めて傍観する子、2人だけでごっこ遊びの世界に入る子など、遊びが分断していきます。

 

まとまるようで、まとまりません。

 

 

誘い方と断り方

分断されてきた雰囲気を感じたのか、なんとか遊びにみんなを巻き込みたい子たちが、「警察です。本屋さんから本を盗んだ泥棒を逮捕します」という設定を作りだし、仲間に入れようと動き出しました。

 

みんなで遊びたい気持ちはわかりますが何もしていないのに泥棒扱いは、ちょっとひどいですよね。ここで泥棒と呼ばれた2人の対応が面白かったので紹介します。

 

「私たちは何もやってませんよ。」と遊びに乗っかりつつ、あえて連行されていき、少し時間が経って自由になったらその場からゆっくりと離れて絵本を読む練習に戻ったんです。

 

遊びに入らずに「やめて」とか否定するのではなく、入りたくない遊びに入るのではなく、周囲との摩擦を最低限に抑える完璧な対応です。大人な対応ですね。これには驚きました。これがコミュニケーションスキルの向上というものです。

 

 

本読みに戻る

最終的にはごっこ遊びがなくなり、絵本を読む練習をそれぞれが行うという終わり方になりました。

 

ここで大事なのは、遊びに夢中で目的が逸れてしまった子たちも、3歳児と4歳児クラスの子に絵本を読んであげたいという目的に自然と戻ったということです。遊びではなく絵本を読む練習をする子や話し合いをしたいと主張する子の姿を見て、その瞬間には遊びは止まりませんでしたが、少しずつクラスの雰囲気が変化していき、全員が目的を思い出したんです。

 

注意や喧嘩のような対立ではなくクラス全体が変化する関わりができていることに、このクラスの成長を感じさせます。オリンピックプロジェクトの一体感が、今に繋がっています。言葉ではなく、心が繋がっているのです。