3歳児の次のプロジェクトは、方向転換を行います。何をしてもおままごと的な遊びになってしまうのがこのクラスの良さですが、一方で遊びが広がらないという弱点がありました。そして、そろそろ試行錯誤や手指の運動を使った遊びの楽しさを感じてほしい。

 

そこで「おままごとのアイテムを自分たちで作って遊ぶ」というプロジェクトを設定してみました。そうすれば興味を持ちつつ、普段やらないことと混ざり合った遊びを展開できるのではないかという考えです。

 

3歳児の遊びの工夫の様子を見ていきましょう。

 

 

#1

 

導入回です。ラーメンが以前のおままごとに出てきていたので彼らのイメージの中にラーメンはあります。そこで「自分たちでラーメンを作ろう」という声かけをしてみました。まずラーメンを入れる器を選んでもらいます。

 

ラーメンのイメージがこちら

廃材の中から各自が好きな器を選びます。ラーメンっぽい器の数に限界があったにせよ、なかなか個性的な器もありますね。センスが爆発していて良い感じです。ラーメンに正解なんてありません。これはラーメンだと思ったら、ラーメンで良いのです。大人の常識を遊びに持ち込んではいけません。

 

野菜マシマシ

自分たちで考えて黄色い糸を麺にして、具材を切って盛り付け始めました。3歳児でここまでできるんですね。すごいなぁと思って見ていたら、ハサミで切るのが楽しすぎて、どんどん具材を追加。野菜マシマシになっている子もいますね。麺が見えません。

緑は野菜とか、赤はチャーシューとか、ちゃんと説明しながら作ってくれました。実際のラーメンを頭にイメージしながら、目の前の廃材や色画用紙を使って、見立てながら作っていく。こちらの予想以上にできているようです。これは頭が良いというより、表現力や思考力の範疇で考えた方が良いですね。素晴らしいです。

 

それでは、乾杯の音頭を取らせていただきます

「カンパーイ!」

突然の乾杯ブームがやってきました。工作のりをコップに見立てています。なぜラーメンで乾杯?ラーメン屋で飲み会する大人を見たことがあるんでしょうかね。子どものおままごとって怖いですよね。見たり聞いたりしたことの再現をしますからね。

子どもは真似をする生き物です。子どもにどんな体験をさせるのか、何を見せるのかが子どもの性格や行動を変えていきます。私たちが保育園で何を体験してもらうかを真剣に追求しているのも、子どもにとっての体験の効果を知っているからです。

 

お品書き

ラーメンが完成した後は、メニュー表を書き始めました。字は正しく書けていませんが、それで良いのです。文字への興味は遊びの中から、こういう感じで自然と出てくるのが理想です。文字は書けと言われて書くものではなく、書きたいから書くもの。勉強とは本来、遊びなのです。興味を持っていれば、そのうち書けるようになっていきます。「好きこそ物の上手なれ」ですね。好きにさせることが上達への近道です。

 

 

#2

 

第二回では、お弁当作りに挑戦です。

 

お弁当のイメージがこちら

前回の材料に加えて、透明の容器、わた等を追加しています。ただし、それを使用するのも使用しないのも各自の自由です。主体的な保育のコツは、遊びが広がるように用意しておくが強制はしない、ということです。

 

茶色はお肉だそうです。奇抜な色のお弁当もありますが、子どもの中ではこれも立派なお弁当です。ラーメンの時と同じで正解はありません。大人の常識を押し付けてはいけません。もし、これはお弁当に見えないから作り直して、という対応を大人がしてしまった場合、その子は「うまく作れないから、やりたくない」という方向へ行ってしまうでしょう。苦手なものにチャレンジしない子に育ってしまいます。完成度への評価は幼児期にそこまで必要ではありません。

 

 

紙テープ祭の開催

ほぼほぼ完成したあたりで、1人の子どもが手を滑らせて大量の紙テープを床に落とし、転がってしまいました。その様子が面白かったのか、ほとんどの子どもたちが紙テープを出したり引っ張ったりして遊び始めました。大興奮です。

偶然性が一番面白いんですよね。なんでそうなるんだろうという知識欲を刺激されるからです。それも立派なお勉強です。

 

片付けも興味津々

その後、「この紙テープどうする?」と担任が聞いたところ、「片付ける!」と勢いよく返事が。みんなで紙テープをくるくるくるくるくる巻き始めました。どうすればうまく巻けるのか、どうすれば絡まらないようにできるのか。各自が協力したり、工夫しながら片付けていきました。

 

子どもにとって初めてのものは新鮮に映ります。興味を持つと言っても良いでしょう。大人に比べて子どもが様々なものに興味を持ちやすいのは「初めてのもの」に出会うことが多いので新鮮な気持ちで物事に向き合うからです。興味を持って別のことをしてしまうのは、実は当たり前なんですね。落ち着きがない子という評価は、小学校に入ってからで良いのかもしれません。もちろん刺激に反応しやすく気が散りやすい子も存在しますが、幼児期のうちに「気が散って別の遊びに行ってしまうけど本来の遊びが面白いから自発的に戻ってくる」、そんな体験をしていくことで集中できるようになっていきます。

 

今回のようにこちらが意図した遊び方よりも、別の何かに興味を持つこともあります。その場合は私たちは別の興味へ行ってしまうことを邪魔したりしません。

 

興味は知的好奇心であり、学習意欲であり、行動力の核となるものです。小さい時から、それを大切にされた子は勉強や運動が好きになるのです。保育士が遊びを指示するような保育だけでは、のびのびと興味関心や意欲が育ちません。

 

 

さて、第一回、第二回で「作って遊ぶ」の「作る」の部分が終了です。次回はいよいよ、作ったラーメンとお弁当を使って「遊ぶ」時間になります。どんな興味が出てきて、どんな工夫があるのか、そこに注目してみましょう。