4歳児の新しいプロジェクトでは与えられた「設定」を意識しながら自分たちで遊びを作り上げていきます。お買い物ごっこに「設定」を取り入れていくとどう変化するかを見ていきたいと思いましょう。

 

#1

初回の様子です。

 

まずはお店を作る

以前にもこの大きなブロックで遊びましたが、あの時は何の「設定」もありませんでした。全部どういう展開になるかは子どもたちの自由でしたが、今回は「お店を作ってください」という「設定」を伝えてあります。

 

手前は陳列する棚のイメージでしょうか。主に女の子たちが作っていきます。こういう商品を魅せるディスプレイを考えるというのは女性の感性という気がしますね。たくさん物が置ける、つまり機能性を重視した考え方です。こちらは「大型店」と名付けます。

 

右奥はお店を四角く囲って作っています。おうち作りのイメージですね。おうちの中にお店がある昔ながらの「個人商店」です。

 

左奥は立体的でこだわりのデザインになっていますが、お店には見えません。作っている人たちも、デザインで揉めています。デザイナーズブランドの「こだわりのお店」ですね。

 

基本的に「大型店」「個人商店」「こだわりのお店」の3つのお店にまつわるストーリーが展開されていきます。

 

ブロックでお店の形を作れたら、仕入れに行きます。品物や道具を各自が自分で選んで陳列するわけです。何を選ぶかというのは、その子の個性が出ますね。

 

お金ってあるところにはありますよね

なぜか大型店にだけお金(黄色い紙)が流通しているようです。男の子たちが仕入れに行っている時に女の子たちはお金を先に全部仕入れていました。恐るべし。

 

ままごとというか、お買い物ごっこですからお金を持っている場所の方がスムーズに遊びが進みます。おかげで、大型店だけで売り上げが出るという展開になりました。

 

「お金、僕たちにもちょうだい」

「えー」

 

お金を要求する他店。しかし大型店はそれに応じようとはしません。大型店は大資本の会社でしょうか。大資本の会社が小さな会社にやることといえば・・・。

 

個人商店に忍び寄る影

はい、それは弱肉強食の世界。個人商店に大型店のオーナーがやってきて品物を強制的に持っていこうとしています。ついでにデザイナーズブランドのこだわりのお店のオーナーも個人商店のレジスターを奪い取ろうとしていますね。

 

「いいじゃん」

「だめだよ!」

「減るもんじゃないし」

 

泥棒か不良みたいな絡み方で商品などを巻き上げていきます。この後、それぞれがそれぞれのお店からほしい物を持っていく展開になりました。お金を少し分けてほしいと思っただけなのに。

 

 

お店の崩壊

3店が入り乱れて物を取り合った結果、大型店も個人商店もこだわりのお店も崩壊してしまいました。自由なクラスなので「設定」の中で遊ぶことが苦手なんですね。

というか、そもそも店員さんとお客さんに分かれて遊ぶという「設定」だったんですけど、それぞれがやりたいことをやってしまっていて、どっちが店員さんでどっちがお客さんかもわからない感じでした。

 

真ん中の塔みたいなものも、前にやった人類の歴史再現遊びの名残だと思います。この大きなブロックを見ると前の遊びが繋がってしまうんですね。

 

 

#2

 

2回目を行う前に担任と私で話し合い、新しい「設定」を一つだけ加えることで変化を促してみることにしました。

 

所持金を均等にする

前回、崩壊のきっかけになった「お金」を1社独占になる前に全員に均等に分配するという対応です。さぁ、その結果どうなったかを見てみましょう。うまく行くと良いのですが。

 

個人商店は乗っ取られる

これで平和が訪れると思ったんですけど甘かったようです。個人商店は大型店に合併吸収され、店を追い出されてしまいました。従業員は大型店で黄色いエプロンをつけてバイトになり、もう1人は右でスマホ(おもちゃ)をいじる毎日。悲しい現実。NHKのドキュメント番組を見ているかのようです。生きるって大変。お金があっても幸せにはなれないんですね。深い気付きを与えてくれました。

 

こだわりのお店ではオーナーが1人で商品の研究に没頭しています。他人なんか関係ないって感じですね。さすがこだわりの店です。料理の研究のようです。

 

大型店一強時代

個人商店の悲しさに目をつむって細かいところを見てみれば、各自の陳列が上手になったり、店員さん交代もスムーズになったり、品物を容器に詰めてお弁当としてこだわりのお店が売り出したりと、遊びとして深まっている様子があります。

やはりお金を均等にすることの効果はあったようです。

設定を意識しながら遊ぶことができるようになってきました。たった2回でここまでの変化があるなら、この後も期待できそうです。

 

ここから一気に物語が動きます。個人商店はどうなるのでしょうか。後編に続きます。