5歳児の水遊びおもちゃ作りプロジェクト第三回、最終回です。
素材と道具の使い方を理解し、水の性質や水の浮かせることを学んだ子どもたちが、今回から自分で考えて自由におもちゃを作っていきます。
前回のストローを使った容器と容器をストローで繋いで水を移動させる装置。ほとんどの子が再チャレンジしています。やっている日は別の日ですが、子どもたちの頭の中ではしっかりと繋がっています。
子どもが同じ遊びを繰り返す時は、まだ遊び足りない時です。つまり、工夫する余地がある、何度やっても成功するという確信を得たい、そういった気持ちがあるということになります。こういう時はどんどんやってもらいましょう。意欲は最高の学習環境です。
作っては実験し、修正しては実験する。
繰り返す実験により高いところから低いところにストローを通して水を流す装置は作ることができました。しかし、ストローの位置が高いところにあるため、水が流れていきません。
じっと観察し、部屋に戻ります。
しばらく考えてから、「コップの横にドリルで穴を開けてほしい」と園長にお願いをしにきました。ストローの設置場所を水より低くすれば、ストローを通して隣の容器に水が流れます。
ついに正解に辿り着きました!
子どもが気付く姿って、本当良いですね。嬉しくて笑顔になってしまいます。
2人はそれぞれ大型船を製作しました。私も子どもの時はよくこういうの作ってましたね。懐かしい。
大型船の中にはストローの切れ端があり、煙突の部分から水を入れると、ストローが水の中で揺れて綺麗に見える。そんな作りになっています。
ここから連続して「主体的・対話的で深い学び」が起こる様子をお見せしたいと思います。
まず、右手前の子。高いところから低いところにストローを通して水が流れる装置を作って試しています。下のコップをピンク、上のコップを黄色で装飾してあり、見た目にも気を使ったおしゃれなアイテムとなっていますね。
ストローは水面でほぼ直角にすれば水が流れていくことを発見、何度も何度も行っていました。何度もやるので、水溜りができるほどに。水溜りをじっと見つめています。水が勿体無いと考えているのかもしれません。
次は中央の子。コップの横に穴を開けてストローを刺せば水が流れてくるという「正解」に辿り着いた子ですね。
さらに一歩進み、ストローを外しても穴から直接水が流れることを発見。
「ストローなくても水が出るんだよ」と保育士に教えてくれました。ある程度遊びが深まった時に気付きました。気付きには時間が必要です。
ここで2リットルのペットボトルを使ったシャワーのように水が出るおもちゃを作った子が右に登場。左の子の「コップの横に穴の空いている装置」に上からシャワーをかけることで、ずっと装置の穴から水が出るという遊びに展開しました。
穴から出た水は別のコップへ。そのコップから水が溢れて周囲は水溜りに。シャワーの水は別のコップでタライから水を汲んでいきます。つまり、どんどんタライの水がなくなって、タライの外に水溜りを作っている状況です。
そこに手前にいた子が合流。装置とシャワーを合体。合体したものをタライの中に移動させました。ついに完成、水の永久機関です。溢れた水はタライの中へ。タライの水をシャワーに入れる。
つまり、タライの水はこれ以上減りません。ずっと遊べます。
3人がそれぞれに気付き、工夫し、お互いに関わることで偶然に生まれた結果です。コラボレーションってこういうことを言うんでしょうね。「主体的・対話的で深い学び」が起きた瞬間です。
最初に素材を選ぶ時に時間がかかるようになりました。箱の中の材料をよく見て選んでいます。これは、何を作ろうか頭の中でイメージできているからです。思いつきで作っているのではなく、完成形が頭の中にあるんですね。かなりの成長を感じました。
養生テープをガムテープ代わりに使うのではなく、装飾のために使用しています。色をつけたいわけです。油性ペンで描くより楽に綺麗にできることを発見したんですね。
コンビプレイも増えました。気がついたら自然とお互いの作品を手伝ってるんですよね。自分のだから自分だけで作る!という喧嘩が起きません。地味ですが、結構すごいことだと思いませんか?
これもコンビプレイ。1人が押さえていて1人が接着しています。「手伝って」とか「やろうか?」とか声かけすらないんですよ。普通に自然に手伝っています。
大型船がタライでは小さかったので、外でプールを出して遊んでみました。
手前の子は水圧でキャップを飛ばす装置を実験中です。射的のイメージと水遊びの組み合わせですね。過去の遊びは現在の遊びに繋がっています。
何人かは園長のドリルに頼らなくても自分でハサミで穴を開けることができるようになりました。中央の子はうまく自分で穴を開けてシャワーができています。
もう一つ面白いなと思ったのは、各自が作ったおもちゃを交換し合いながら遊んでいたということです。自然と協力して作るだけでなく、遊び方も個人の枠を超えて遊べているんです。
こういうことがみんなできれば、世の中から争いがなくなるのかもしれませんね。子どもから大人が教わることばかりです。
七夕まつりを経験してから遊ぶメンバーがチーム固定みたいになっていたのですが、最近はチームではない子同士で遊ぶ様子も増えてきました。
右の子たちは濾過する装置みたいなのを作っています。もちろん完全に濾過して綺麗な水を出すとか、そのレベルではありませんが、仕組み的には同じです。
左の子は永久機関を新しく作って試しています。今度は大きさを変えて作っているようです。大きかったものを小さくしていました。小型化の技術革新ですね。
みんな色々工夫しています。
水遊びおもちゃ作りプロジェクト、以上です。いかがでしたでしょうか。夏だから、水で遊ぶ。そんな単純なことでは保育の時間がもったいない。年長さんだからできることがたくさんあります。
今回も子どもの成長と可能性を感じることができました。