遊び方は子どもの数だけ存在します

きらり美南保育園では令和元年度より345歳児クラスでプロジェクト保育を行っています。プロジェクト型の保育を簡単に言えば「できるかぎり子どもたちの力だけで、子どもたちが協力してある目的を達成することに、保育士が寄り添う保育」です。保育士が教えるのではなく、子どもたちが「主体的・対話的で深い学び」を実践できる保育だと言えます。

現在、保育園・幼稚園・子ども園は「主体的・対話的で深い学び」の教育を行う幼児教育施設であると定義されています。幼児期における教育とは「遊び」です。遊びの中で教育的な効果を生まれるような環境を作るのです。小学校・中学校も同じように「主体的・対話的で深い学び」を行う教育施設であり、乳幼児期から学齢期まで一貫して日本の教育の基本方針が「主体的・対話的で深い学び」になっています。

さて、今回は「令和3年4月の5歳児おーろら組のプロジェクト保育(全7回)」を丁寧に説明、解説していきたいと思います。初回は大まかな様子です。

第一回

ピタゴラスイッチのコースを協力して作る

「お兄さんお姉さんとして」がテーマの4月のプロジェクト。子どもたちの話し合いの結果、4月のお誕生日会の出し物としてピタゴラスイッチ(ボールをゴールまで運ぶ装置)を作って全園児の前で発表することになりました。空箱などの廃材で自由に工作する子、絵本や積み木を使ってコースを作る子など各自が自由に遊んでいました。

第二回

部屋中に水たまりができる位の水遊び

水を使ったコースを作成中に水をこぼれてしまった子がいて、そこから全員で室内水遊びに発展しました。部屋全体に水たまりができるほど夢中になり、笑い声が絶えません。途中で自発的に掃除をする子が出てきて、結局全員で掃除をすることになりました。子どもだけでの掃除はなかなかうまくいかず、拭いても拭いても水は減りません。掃除が終わったころにはみんなぐったりしていました。

第三回

水を拭き取る子と遊びを継続する子

前回に続いて水を使う子と「水を使うことをやめよう」と制止する子に分かれて対立構造になりました。子どもだけの話し合いの結果、「自分でやったことは自分でする。水で遊んだ子だけが片付ける」という結論になり、水を使った子だけが掃除をすることに。他の子は自分のやりたい遊びを楽しみます。水を使った子たちは人数が減ったことで前回よりも掃除が大変になり「どうすれば効率よく拭き取ることができるか」を考え、いろいろ試しながら片付けをしていました。

第四回

洗濯ごっこという理由付けがすごい

前回水遊びをした子は「水を使わないほうが良い」と自分で判断して別の遊びをしていました。しかし、前回水を使わなかった子の中に、こっそり水を使う子が現れ、拭いているフリをしながら水遊びをするという複雑な遊びが始まりました。参加者が増え、いけないことをしているけど「ギリギリ問題ない」みたいな雰囲気を出しつつ、そこまで片付けに時間がかからない程度に水をつかって集団で「洗濯ごっこ」をして遊んでいました。また、ピタゴラスイッチや自由工作も進み、他の子の作品を参考に自分でも試行錯誤しながら作っていく様子が見られました。

第五回

色水の実験に夢中

本番まで時間がないことに気付いた子どもたちからピタゴラスイッチと物語の2つのチームに分かれて準備を進めるという提案がありました。物語チームは人形劇の大道具や小道具を作るつもりのようですがシナリオがあいまいで全体での統一感はありません。しかし一つの物語を作るという目的は同じという不思議な一体感がありました。ピタゴラスイッチチームのほうは水遊びが進化したジュース作りが生まれ、目的からどんどん外れていきます。どうすれば水に色はつくのか等、各自の実験遊びは深まっていきました。今までまったく工作に興味がない子も参加していて、まとまりが出てきました。

第六回

色水遊びが深まっていきます

前日準備の日。2つのチームがここに来てジュース作りでまさかの一体化。遊びはより深まり、絵の具を使った色をつける実験は最高潮に。誰かの発見が他の子の実験のヒントとなり、クラス全体で色水実験が繰り広げられました。物語のための小道具やピタゴラスイッチの装置も一部完成し、人形を使った遊びが展開したところで時間終了。子どもたちから「間に合わなかったので事前に集まって準備したい」という提案が出たので当日の朝に少しだけ打ち合わせをすることになりました。

第七回

お誕生日会でアドリブ劇を発表

お誕生日会当日。ぶっつけ本番のアドリブ劇を発表することになりました。保育者もシナリオをあえて決めていません。園長の思い付きのナレーションに合わせ、その場でセリフや動きを考えて披露するという説明に子どもたちは大興奮。事前準備の時間では各自やりたい役を話し合って決めました。用意したはずの小道具が見つからない子がいましたが「みんなで使えば良い」と一致団結して本番に臨みました。実験で作ったカラフルなジュースを役になりきって動物さんにプレゼントしたり、ピタゴラスイッチの装置を披露することができました。終了後には興奮しながら「すごい楽しかった!」という声が多く上がり「またやりたい!」と充実感のある良い表情をしていました。

全7回の4月のプロジェクトはこれでおしまいです。子どもの成長をとても感じられ、保育者にとっても楽しい時間でした。流れの説明に続いて、一般向けと専門家向けの解説をしたいと思います。