クリスマスツリー作り。五回目でついに協同的な関わりが出てきたところまでお伝えしてきました。続きをご覧ください。

 

♯6

今こそ合体の時ッ!!

レンガチームは仕上げを行い、はっぱチームとみきチームが合同で貼り付けを行っています。もう自分のチームとかじゃなくて、みんなのツリーという意識があるのかすんなり進めていけていますね。合体するのが嬉しいというか、ワクワクしているような感じです。

 

自立!

天井まで届くくらいの高さにしているので、そんな簡単に自立しないだろうと思っていたのですが、まさかの一発OK。自立しました。自然と拍手が湧き起こる。レンガチームがめちゃめちゃ周囲を頑丈にしていたのが良い効果を生んでいるのかもしれません。偶然の産物。

 

最高のシーン

自立したことに興奮して片付けを忘れている子がいます。左の子が「忘れてる人いるよー」と声をかけています。こういう場合、大人や気付いた子が代わりに片付けてしまったり、指摘してしまうことが多いものです。教えてしまっては気付く力が育たない。

 

「忘れている人がいるよ」という指摘を受けるだけで「自分かも?」という吟味をそれぞれが一度行うことになり、自ら気付こうとする意欲が育まれます。仲間同士で助け合っている雰囲気も生まれるし、最高です。

 

全員で一つのことをする喜び

無駄話をする子は1人もいません。会話といえばツリーをどうするのか、作業工程の確認や物の貸し借りについての報告連絡相談だけ。すごいですよこれ。しかもやりたいので、みんな主体的なんです。やりたくないことをしてる子が1人もいない。遊びのゾーンに入っています。

 

みんなで守る、僕たちの木

移動中のハプニング。倒れそうになったのを支える子どもたち。そもそも移動に邪魔だからと、手前の椅子は重ねて最初から退けてありますからね。移動進路を予測して危険物をあらかじめ排除しておくという行動にも驚かされます。

 

ちょっと前には何も考えずにキャラクターを集めるのに夢中になっていたのに、ちょっとしたきっかけと体験で人は変わるものですね。

 

本当に飾れるのか実験

5歳児クラスが作ったクリスマスツリーには3歳児が飾りをつけることになっています。自立した次にやることは、本当に飾りをつけることができるのかの検討です。

 

コップに紐をつけただけの簡単な飾りを実際につけてみます。

 

つきません。

 

そりゃそうです。ただのギザギザですから、ひっかっけるところもないし。デザインと自立するかどうかに意識を向けすぎて、飾れる場所があるかという視点が欠けていました。

 

改善に向けて再始動

もはやチームもなく、それぞれが改善に向けて動き出しました。紙に設計図を書く人。ギザギザにアレンジを加えるためのパーツを作る人。頭を使って進めていきます。

 

 

重なった瞬間

設計図を書いた子が指揮し、パーツをつけていきます。中央をご覧ください。ひっかけるパーツをつけたことで、紙コップ飾りを飾ることができています。

 

しかし、ここで時間終了。準備に費やせるのはあと一日。さぁ、どうなっていくのか。

 

♯7

 

最後の準備日です。

吉とでるか凶と出るか

最後の準備日。呼んでも来ない子に、みんなで追いかけっこして運び始めました。これは無理やりすぎるのではないか、止めるべきか。そう思いましたが運ばれてる本人は楽しそうに笑っています。これが正解だったのか。触れられても嫌じゃない関係。ハンモックにみんな「満員のぎゅうぎゅう詰め」でも平気だったもんなぁ。

 

そして時は動き出す

全員で最後の仕上げをしていると、これまで全体の活動に入りそうで入らなかった子が作業を手伝い始めました。

 

みんなで迎えに行ったことが嬉しかったのかもしれない。遊びながら誘ったのが良かったのか。自分から入れないから誘ってくれるのを待っていたのか。きっと全部当てはまるんでしょう。とにかく、子どもたちの力で全員で一つの目的に向かって行けるようになったことが大事なんです。

 

ただし、長い棒を右手に持ったまま。今は全く関係ない。私も担任も注意をしないし、声をかけません。あの棒、なんとかしてツリーと合体しないかなぁ。そんな希望を持ちながら見守ります。

 

真似る力

奥の2人がなぜかツリーの絵を描いています。これも前回の設計図を書くというところから連想が始まった個人遊びなわけですが今はツリー本体の修繕をする時間。描くのに夢中になっているので間違いに気がついていません。

 

この2人は「一緒に同じものを描く」のが楽しいとレンガチームで盛り上がった2人です。今の2人は一緒に描くことが何よりも楽しい。他の楽しさは入っていきません。仕方がないことです。むしろその気持ちを育てていくと「誰かと一緒に楽しめる」スキルが育つので今の盛り上がりを邪魔をしたくない。もちろん、私たちは叱ったり指摘したりはしません。

 

右手前の子は真似してツリーの絵を描いています。善悪ではなく子どもというのは「楽しそうにやっていること」を真似ようとする。不適切な行動がたくさん行われている園や学校が学級崩壊になっていくのはそれが理由です。

 

つまり、今間違っている3人を注意したり叱ったり止めるのではなく、正しい行動の方がおもしろい、楽しいと他の子が感じて夢中になって遊ぶようになれば、今間違っている子達は自分の行動をやめて適切な行動(みんなが夢中になって遊んでいること)を真似しようとするはず。

 

みんなが夢中になって盛り上がってくれることを期待します。そして3人を自然と導いてほしい。

 

1人目。

以前みきチームで声をかけていた右の子と一緒に、ツリーのギザギザを増やすことを始めました。自分の意思で正しい行動を選んだのです。

 

もう一度言います。

 

自分の意思でみんなと同じことをすることを選んだんです。「自分が好きなことをする」というのが子どもの中での正解だとすれば、自分がしたいことがみんながしたいことになっているのが一番良いってことになる。

 

この子は今、みんなと同じことをすることを楽しいと感じているんです。楽しいことが同じ仲間って最高じゃないですか。ここまで来るのは長かった。待っていて良かった。

 

いつもみんながそばにいてくれたから、ここまで来れた。支え合って子どもは育つんだなとあらためて感じます。

 

補強は進む

高いところは背の高い子が行う。一体感が出てきました。みんながグッと一つに集中している様子がわかりますね。

 

主役にならないことへの喜び

「切ったものはここに置いておくね」と言って下にパーツを置く子。

ガムテープを千切って渡す子。

パーツをタイミングよく渡す子。

貼る子。

 

4人のチームワークが展開しています。共通の目的を達成するために役割分担を自然に行いながら楽しんで進めていけている。これです。これはまさに夢中になっている姿。これが展開されるなら、部屋の中の雰囲気に変化が生まれるはず。

 

気付く2人

みんなが夢中になってきたタイミングで、自分たちが何をしていたのかに気づきました。バツが悪そうに右の子は丸めて隠してしまいます。左の子は旗みたいにすれば良いんじゃないかみたいな独り言(言い訳?)を言いながらみんなの方へ移動していきます。さぁ、どうなるか。

 

2人目。

「ねぇ、みんなこれどうすれば良いと思う?」といろんな人に聞きますが、みんなの耳には入りません。先ほど説明した通り、無駄話は耳に入らないんです。無視してるとかじゃなくて、遊びのゾーンに入ると研ぎ澄まされた集中力が関係ない情報を無意識にカットしてしまう。

ちなみにもう1人は右の床に座り込んで絶望していますね。こっちの方が重症です。自分で解決できない状態になっている。

 

そんな時中央の男の子が左の子に気がつきました。

 

さぁ、どうなる?

 

みんなで受け入れる

気付いた子が中心となって本体にまったく関係のなかった旗を接続していきます。やるとなればこれはツリーの一部。みんなのツリー。みんなで協力して繋げていきます。

 

見えないバトンをつなげた鼓笛の日々を思い出しました。今は本当に物を物理的に繋げることで、仲間の想いも繋げている。

 

良い行動は真似られる

それを見ていた子も、自分の持っていた棒を本体にくっつけ始めました。倒れないよう補強しているんです。自分からみんなのツリーに協力している。

 

同じことをする、手伝うという段階から一つレベルが上がり、自分で考えてみんなのために行動するという結果を生みました。子どもが覚醒した瞬間がここにある。その瞬間を写真に収めることができて良かった。皆さんに伝えることができる。

 

この子の成長はここで終わりません。

 

3人目。

なんと、絶望していた子の棒を受け取り、それも本体に接続し始めたのです。他の子の心も救ってしまうとは予想できませんでした。何日か前は1人だけ活動に参加しなかった子が、今日は活動に参加できなくなった子を仲間に引き入れた。

 

子どもの成長には驚かされます。助けたり助けられたり。そうやって人は育っていく。

 

こんな活用方法があったとは

例の旗みたいな棒ですが、伸ばすことでツリー本体が後方に倒れないようにつっかえ棒の役割として活用することを思いついたようです。何人かのアイデアを集めて、左の子がシステムを完成させました。これを予測できた人、いませんよね?

 

すごくないですか、これ。

 

仲間の作ったものは無駄にはしない。活用できる。こんなふうに使ってもらえれば、作った子も笑顔になれる。自分が間違ったことをしたという恥ずかしさは少し残るけど、後悔にはならない。

いや、「間違ったこと」は最初から存在しなかったかのように、最初から「つっかえ棒」を作ったんだと言わんばかりに、この空間全てが肯定的な優しい雰囲気で包まれます。

 

 

最後のダメおし

最後の最後には、1人でやるだけではなく、支える役割を率先して行い、役割分担して作ることができるまでになりました。

 

本当の意味で全員で作り上げたクリスマスツリー。子どもたちのアイデアと行動によって、思いもよらない結末を迎えました。

 

時々奇跡としか思えないことが起こるプロジェクト保育ですが、今回もやってくれましたね。見ていて心が震えました。

 

成長するまさにその瞬間、子どもが輝く瞬間。命の輝き。皆さんにもお伝えすることができて、本当に良かった。

 

伝わってますか?もしかして感動しているのは私だけだったらどうしよう。

そんなことないですよね。感想、お待ちしてます!

 

次回、本番の様子をさらっとお伝えして締めたいと思います。