今回の3歳児プロジェクトは、運動会シーズンというのもあり、身体を使ってみんなで遊ぶことをテーマにしてみようという計画です。

 

勘の良い方はピンと来たと思いますが、5歳児のオリンピックプロジェクトに近いですね。遊びの内容への工夫というより人間関係が色濃く出るような遊びの展開が予想されると言うことです。つまり、お友達同士のトラブルが増加する。

 

というわけで、途中雲行きが怪しい感じになりますが、最後には落ち着きますのでご安心ください。それでは、いってみましょう。

 

 

#1

 

初回は普通にマットを出しておき、自由に遊んでもらって様子を見ます。一体どんな遊びが展開されるのか、楽しみです。

 

遊び方も模索中

とりあえずマットの上に座ってみたり、くるまってみたり、運んでみたり。遊び方が定まりません。遊び込みが始まるまでには時間がかかります。

 

 

動く遊び

マットで遊んでいるわけですがら、慣れてくると運動遊びが始まります。重ねたマットの上や周囲を飛び跳ねています。

 

不安定な足場でバランスを取る遊びは子どもに人気です。感覚遊びを中心に遊びが展開していきます。

 

 

静かな遊び

マットを使った遊びのもう一つは、布団のように使う、寝る遊びです。このように、遊びは「動」と「静」を交互に繰り返しながら進んでいくことが多いものです。柔らかな感覚が、気持ちを落ち着かせてくれます。

 

 

ごっこ遊び

さらに慣れてくると、ごっこ遊びが始まりました。こちらは、お馴染みの「ねこごっこ」です。体を使った遊びは、赤ちゃん返りがしやすいので、こういったごっこ遊びも展開しやすいという特徴があります。

 

 

汽車ヒーロー登場

最後はマットを使った電車ごっこです。子どもから「汽車ヒーロー」と呼ばれていました。どのへんがヒーローなのかは分かりませんが楽しそうで何よりです。今回は初回ということもあって、特に注目すべき点もない、普通のマット遊びが展開されましたね。

 

良いといえば良いのですが、遊びが深まらなかったことが若干引っ掛かります。そもそもなんでもごっこ遊びにしてしまうクラスですから、ままごとセットや砂などの具体物がないと、遊びを深めるのが苦手なのです。

 

イメージを共有できなければ集団遊びが深まらないのに、部屋にあるのはマットだけ。マットを使った遊びの工夫の仕方が共有されなければ、遊びが深まらない。今後の展開としては、新しい遊び方や共有する世界観、何度やっても面白いという鉄板のパターン遊びが出てくることが予想というか期待されます。

 

なぜ遊びが深まってほしいのか。それは深まった時が一番成長するからです。集中して、人とぶつかり合って、時間をかけて乗り越えていく。その瞬間を私は待っています。

 

 

#2

 

第二回では新しいマットを投入しました。0歳児クラスの赤ちゃん用マットを複数種類です。前回、あまり遊びが深まらなかったので、試しに増やしてみようという実験です。

 

 

新しいものは人気

当然、新しいマットに人気が集中します。マットを並べてアスレチックコースを作る遊びが始まりました。コースを整える人、列を守って並ぶ人、他の場所からマットを集めてくる人。集団としての遊びになってきました。

 

 

車ごっこ

マットを2人組になって折り曲げ、「ブーン」と車ごっこをする子が出てきました。これがすごく楽しそうだったので、特に男子の中で2人が一目置かれる存在に。遊びにも工夫が出てきましたね。しかも1人ではできない遊びという点がポイントが高い。

 

奥では高く積んだマットからジャンプする遊びや、でんぐり返しをする遊びが行われています。

 

 

壁に囲まれる

壁を作ってその中に入るという、それだけの遊びですが人気です。動きはないので「静」の遊びですが、こういった遊びがメリハリを作ります。

 

みんなで同じ場所に集まる、壁というもので囲まれるというイメージが共有されました。こういう遊びが出てくると、「この遊びの中にいる子」と「外にいる子」に分かれていく傾向にあります。いわゆる、遊びに参加できない子からすれば仲間はずれ的な意味合いにとる子も出てくるし、違う遊び方を提案して旧メンバーと揉めたりします。

 

常連さんで盛り上がっていたら新規のお客さんが入ってきて変な空気になる居酒屋と言えば伝わりますかね?もしくは「昔ながらのファン」が「にわかファン」を受け入れない空気感というか。ぎゅっと仲良くなると、外の人とのズレが出てくるんですね。

 

 

汽車ヒーロー再び

はい、最後は安定の汽車ヒーローです。あえて視界が悪い状態で連なって走るというスリルや一体感が楽しいのでしょうか。横がまったく見えませんし、前方は前の子の頭しか見えませんし、結構怖いと思うんですけどね。

 

二回目で遊びがちょっと変わってきましたね。これは期待できそうです。遊びの広がりを感じますが、まだまだ深まってはいないかなぁという印象です。

 

 

#3

 

第三回は特に変化なしの設定でやってみることにしました。遊びが広がってきていたからです。今回で遊びが深まることを期待しています。

 

 

車ごっこの流行

手前でも奥でも車ごっこをしています。日が変わっても「楽しかった」「楽しそうだった」という記憶は残っているので印象的な遊びは再現されるのです。これも一種の「対話」ですね。お互いに影響しあっています。

 

 

運動遊びブーム

遊びの工夫はマットの配置でも表現されるようになりました。そこらじゅうでマットを配置して前転やジャンプなどが行われます。

 

大人が決めたコースではなく、自分たちで考えて設置したコースというのが良いですね。右下の子は前転している子を支えています。遊びの中で助け合いが行われているのです。

 

 

この後、衝撃的な言葉が!

「動」の後には「静」の活動ですね。

 

前回の壁を作る遊びのイメージと、寝る遊びと、いつものごっこ遊びが融合し、壁の中と外という設定での遊びが始まっています。こういう配置でこの展開なら、中と外を意識した方向にストーリーが進むと予想されます。つまり、こっちの人間とあっちの人間という対立構造が出てくるかもしれない。

 

突然具合が悪くなって倒れた(という設定の)子の元にみんな集まってきました。

 

「お腹に赤ちゃんがいますね(医者役?)」

「赤ちゃんはいらない!出ていけぇぇぇl!(妊婦役?)」

「私を中に入れてよぉぉぉぉ!(入口の人、何役か不明)」

 

ええええっー?!

どういうストーリーなんでしょうか?!

 

いきなり大声を出し始めました。迫真の演技すぎてリアルな緊張感が部屋中を駆け巡ります。表現力がすごいです。

 

出ていけとか、中に入れてよとか、中と外をイメージした遊びになっています。私の中ではここは予想通りです。でも、赤ちゃんいらないとか、こんなにハードな展開になるとは予想できませんでした。

 

 

誰か助けてください!

その声に反応するかのように、部屋中の子どもたちがバタバタとその場に倒れていきました。何の打ち合わせもしてないんですけど、なんでそんな柔軟に反応できるんでしょうか。

 

「大丈夫ですか!」

「・・・・。」

 

「しっかりしてください!」

「・・・・。」

 

倒れて動かなくなる人と、それを助けようとする人。さきほど説明した、対立構造ですね。

 

 

しかし、誰1人生き返りません。ストーリーが動かない。

 

 

「誰か、誰か助けてくださいっ!!」

 

部屋中に彼の悲痛な叫びが響き渡るのであった・・・。

 

 

というわけで、前半はここまでです。この文章を書くためにメモや写真を見返していたのですが、本当に何でこんな展開になったのかのヒントすら発見できませんでした。子どもの世界は面白いです。私は映画とか作品を見るときに無意識に先の展開を予想というか分析しながら見てしまう癖があるのですが、そんな私にも全く予想できませんでした。悔しいです。

 

妊婦さんが具合悪くなって倒れるのはわかるんですけど、何で他の子たちが次々に倒れていったのか。

 

おそらく、これが集団遊びに必要な「イメージの共有」です。倒れる必要性を無意識にイメージしている。そういう遊びなんだなとみんな理解して演じている。そういうごっこ遊びを楽しんでいる。このクラスの遊びを振り返ってみると、地震です遊び、ギャングや家族の物語、病人を助ける遊び、コーヒー屋さんなど、イメージの共有は起きていました。

 

後半にストーリーが展開していく予感がしませんか?

 

それでは後編へどうぞ。