乳児保育シリーズ第四回、ラストを飾るのは自由遊びです。自由遊びとは言っても、各自が自由にやりたいことをする保育ではありません。保育士が設定した環境の中で自由に遊ぶ。これがコツです。

与えられた環境の中で工夫して遊ぶ。保育園ではその力をつけています。

私の園では「ずっと自分がやりたい遊びだけをできる環境」にはしていません。なぜなら人生は全て自分の思い通りにいかないからです。

学校や会社のルールがあり、法律がある。相手の立場や都合もある。我々が生きる世界は自由ではありません。「与えられた環境」の中で生きていくしかないのです。

自分が置かれている環境の中で「楽しむ」ことができないと思春期以降、生きるのが苦しくなります。幸せに生きるためには人生を楽しむスキルが必要です。乳幼児期のうちから「楽しむ工夫」を繰り返し体験することで、この先の人生全てを前向きに生きていく力の土台を作っています。

そうです。それを0歳児のうちからやっている保育園なんです。

 

布自由遊び

感覚遊びや素材遊びでも活躍する布。2歳児クラスになるとお友達同士の関わりが増えて遊びが広がっていきます。素材を感じることがメインだった01歳児の布遊びと違い、この日の2歳児では「大人の真似をして寝かしつけごっこ」だったり「引っ張り合い」で楽しんだりしていました。

自由な発想が生まれるように遊び方は保育士側で限定していません。自由な発想とは思考力の基礎であり、問題解決能力の一要素です。生きる力とも言えます。

素材遊びで感覚入力を促進し、感覚運動遊びで身体の土台を作る。手指運動遊びで手先を器用にして遊び込むための力をつけ、最終的に自由遊びで工夫して遊ぶ力をつける。

全ては繋がっています。

 

ままごとは自由遊びの王様

おままごとと砂場は自由遊びの王様です。決められた遊び方がないので、ほとんどの子が楽しく遊ぶことができます。

この日は何をすればクラス「全員」の子どもたちが遊びに夢中になれるのか保育士たちが話し合い、おままごとなら意欲的にやるのではないかと予想して行った日です。結果は大成功。クラス全員が遊びに集中していました。このクラスの保育計画の中では朝夕の合同保育中にできるような遊びは、あえてクラス活動の計画に入れていなかったのですが、しばらくは取り入れていくことにしました。

子どもの状態によって保育の計画も柔軟に変化させていきます。計画はあくまで計画です。子どもの成長につながっているかで改善していきます。

 

見つめ合うと素直におしゃべりできない

自由に遊ぶということは、自分勝手に遊ぶことではありません。遊びたいものがたまたま同じになることもあります。保育士からの関わりを減らして子ども同士の関わりを増やす自由遊びでは子ども同士のケンカやトラブルが起こることも当然出てきます。

暴力や怪我は未然に防ぐべきですが、そうではないトラブルは体験することが成長につながります。例えば小学校。授業中は平気なのに先生のいない長い休み時間や登下校の時間にトラブルが多い児童がいたりしますが、自由場面でのコントロール力が弱いことが原因です。

乳幼児期に自由遊びで自分で考えて自分で解決をする「大人に依存しないコントロール力をつけていくこと」が重要であることがわかると思います。

 

困った時のボールプール

とりあえず数で勝負!という感じのボールプールですが、マット、ぬいぐるみ、風船を合わせて自由遊びで使用しています。様々な大きさや固さが入り混じっている中で自分の気に入ったものを選択して遊びます。感覚遊びでもありますが、「探索力」「選択する力」「区別する力」も養うことができます。

 

環境を変えると遊びの方向性が変わる

保育士があらかじめ家のような形に組み合わせて自由遊びをスタート。当然、スタート時の環境を使った遊びが行われます。家のように入ってみたり、くぐったり、窓から顔を出してみたり。

自由遊びだから自由に遊ばせるわけではなく、保育士は保育の計画を元にねらいをもって環境を設定します。

何も考えずに保育をすることがないよう、園長から保育士にいつも伝えています。常に考え続ける保育士。それが良い保育士になる第一歩です。

 

 

砂場の設定って面白い

この日はあえて砂場エリア内で遊びを活性化させたいという担任のねらいがあり、ベンチやテーブルも砂場の中に入れてスタートしてみました。

すると「せまい」ので砂をいじる場所が減ってしまい、活発な砂遊びが減るというデメリットが発生。当たり前と言えば当たり前です。

しかし、せまいからこそ子ども同士の関わりは数倍にアップ。ひとり遊びが減り、お友達同士のやりとりが増えました。主体的で対話的な遊びが生まれたのです。残念ながら深い学びはあまり見られませんでしたが、環境を変えたことで面白い変化が見られました。

 

この後、園長と一緒に担任がミーティング。砂場の環境保育について話し合いました。私からコツは伝えますが、具体的にどうしていくかを考えるのは保育士たちです。

 

 

さて、ここからは少しだけ1歳児クラスの水遊びの様子を解説したいと思います。「遊びの解説はもういいから、子どもの様子を教えてよ!」と皆さん思ってません?

 

おもちゃの楽しみ方を理解

水車の上からおたまで水をかけたら、偶然水車が回ったのを見て、「おお!」と歓声をあげて体全体が震えて、目をまんまるにしていました。その直後にもう一度水をかけている瞬間の写真です。

おもちゃの楽しみ方を発見、仕組みを理解し、すぐに再現し、確信する。深い学びですね。この子は偶然の中から「気付く」力があります。他の遊びでも度々そういうシーンが見られるのですごいなぁと思っていたら、この日も発見していました。素晴らしい。

 

観察学習

今年度初めての水遊びです。新入園児の子にとってはさらに初めての体験です。クマのTシャツの子はみんなが遊んでいる中、ピクリとも動かず、ただじっとタライを見つめています。

いつ遊びに参加するのかなと思って注意深く見ていたのですが、ちょっとずつ、ちょっとずつ、それこそ1分に1センチくらいのスピードでタライに近づいて行きます。かわいいですね。一応水車を持っているので、水遊びに興味はあるようです。

 

しゃがむことに成功

1センチ移動を繰り返し、残り5分でしゃがむことに成功。でも水に触れたりしません。すると隣に来た子がパシャパシャして、水が手にかかりました。

 

ピクッと反応するクマの子。ちょっと嬉しそう。

 

しかしそのまま水に触れることなく時間が過ぎていき、「残り1分です」の担任の合図が・・・。どうするクマの子!

 

残り10秒でフィニッシュです

残り10秒前で、ついに水にタッチ!

間に合いました!残り10秒でクマの子、フィニッシュです。

 

あれですね、8月31日になって夏休みの宿題をやる的なやつですかね?

ギリギリになって動き出す的な?

 

終了時間は過ぎてますが、少しだけこのまま水で遊んでもらいました。乳児保育では何よりも意欲を育てることが大事です。ここで水遊びが楽しいと体験し、もっと遊びたいと思うことで、次回からの参加が早まるからです。

 

遊んでいない子に保育士が声をかけてしまうのはよくある光景ですが、それをしなかったことで主体的に自分の力で遊びに入ることができました。これが先ほど説明した、大人の力を借りずに問題を解決するコントロールの力を育てる、という保育です。実例を挙げさせていただきました。

 

遊びの種類別の乳児保育の解説、いかがだったでしょうか。最近、保育士や教員など専門職の方からブログについて聞かれることが多く、専門解説の要素を強めてしまったかもしれません。

012歳児ではストーリー分析もできませんし、プロジェクトを成し遂げることもできないので読み応えのある紹介の仕方も難しいのですが、次の乳児保育の解説は子どもの様子中心で行ってみようと思います。