園としては数年ぶりの遠足。その遠足当日がやってきました。てるてる坊主は明るい未来を連れてくるのか。体験で人は学ぶとすれば、遠足が子どもたちをどこに導くのか。水族館遠足編、後半の今回は、当日そしてその後の遊びの様子をダイジェストでご覧いただきます。

 

 

♯10(遠足当日)

窓から見守るてるてる坊主たち

遠足当日。てるてる坊主のおかげかわかりませんが、雨は降っていません。曇っています。気温も上がりすぎず、過ごしやすい気候です。快晴ではないけど遠足には最適な天候です。

 

 

なまりんバス

そしてやってくる市に借りた大型バス。埼玉県吉川市のキャラクター「なまりん」がプリントされたバスは、通称「なまりんバス」と呼ばれています。この人数で乗るにはかなり大きい。数十人は乗れる特大のバスです。

 

「これはテンション上がるわ」

見ていた保護者の声が聞こえてきました。

 

確かに。このバスってこんなに大きかったかな。大人の体の大きさでそう思うんだから、小さな子どもが感じるバスの大きさって、私たちよりもっと大きく感じるはずです。

 

 

貸切ってテンション上がりますよね

バスに乗り込む子どもたち。市内を巡航するバスをイメージしていたみたいで「お客さんが乗ってきたら席を譲るんだ」とか言ってました。かわいいですね。この年齢ではこういう観光バスに乗る体験もなかなかないでしょう。旅行も自家用車やレンタカーになるでしょうし。

 

バスの大きさと「貸切」という状況にテンションが上がり、いよいよ遠足に行くんだという高揚感に包まれます。

 

 

シートベルトチェック良し!

いよいよ出発です。何人かの保護者の方が見送りをしてくれていました。遠足に行った事がない世代。経験がないのは子どもだけでなく保護者も同じ。子どもだけでなく保護者の皆さんにも緊張や不安があるのを感じました。

 

 

「まだつかないの?」

「あと何分?」

「保育園のみんなに会いたくなっちゃった」

 

何度も何度も、そんなことばかり言う子どもたち。

 

園から離れることが不安なようです。物理的な距離は心の距離と同じ。バスが子どもたちを遠くへ運べば運ぶほど、大好きな保育園や家族と離れていく。

 

 

楽しみと不安を天秤にかけながら、バスは目的地へ向かっていく。

 

 

海は広いな大きいな

保育園から100キロ離れた水族館に到着。海をみんなで眺めます。

 

海の匂い。湿った風。波の音。五感全部で海を感じる。何度も遊びの中で出てきた海。実際の海を体験する。だけど、心ここにあらずって感じです。初めての場所が苦手な子が多いのかもしれない。海を見て「怖い」と言う子もいました。

 

想像上の海と、実際の海。全然違うんですよね。そのスケールの大きさに恐怖を感じるのもわかる。自然の前で人間は圧倒的に無力です。こういうのも体験しないとわからない。自然の恐ろしさを感じるのも良い勉強です。

 

 

列になって

まずは外のエリアでペンギンなどを鑑賞します。一列になってお行儀よく進む子どもたち。とっても静かです。

 

もっとはじけても良いんですけどね。好き勝手どこかに行ってしまって「待ちなさーい!」と言われるくらいのほうが子どもらしくて面白いのに。

 

 

こぼさず食べるチャレンジ

この水族館では落ち着いてお弁当を食べられる場所の確保が難しいため、ショーの開始前に観覧席で食べることを推奨しています。この子たちにとっては観覧席でお弁当を食べることも初めての経験のはず。

 

レジャーシートの上でもなく、テーブルもない。膝の上にお弁当を置き、落とさないように食べる。なかなか難しいですよね。

 

みんな表情が硬いですね。それには理由があります。

 

実はお弁当の中に「しば漬け」が入っていたんです。注文した具材には入っていなかったのですがお弁当屋さんがサービスでつけてくれたようです。

 

「この辛いの何?」

「変な味がする」

「美味しい」

 

感想は様々ですが、ほとんどの子が生まれて初めて「しば漬け」を食べるという体験をここですることになりました。予想外の展開。

 

未知のものに挑戦する。

 

これも、子どもにとっては不安を乗り越える体験になっています。

 

 

「海豚」と書いて「イルカ」と読む

みんなでお弁当を食べた後は、イルカ・アシカショーを観覧。

 

どのルートをどの順番で行けば一番子どもたちの体験を増やせるかを考えて計画をしています。子どもたちを急かすようなことはしたくない。あくまでも自然に、あくまでも自分たちでペース配分を考えて進んでほしい。そのために時間が決まっているショーの観覧を前半に入れてあるわけです。

 

 

感動の力

目を輝かせる子。

真剣な表情の子。

笑顔になる子。

自然と拍手をする子。

 

それぞれの自分らしさが出ています。ショーを観覧しているのは受け身の状態ですが、感動の表現としては主体的です。個性が出てますね。

 

感情が動くから「感動」です。夢中になると余計なことを考えなくなるから、不安が消えるんです。

 

保護者から遠く離れたことで感じた大きな不安。イルカショーで感情が大きく動き、不安が減ってワクワクが増えてきました。

 

ありがとうイルカたち!

 

 

みんなで観覧する喜び

ショーも終わり、本格的に水族館の進路に沿って見学していきます。

 

「大きい魚いたよ」

「見てー」

「こっちにもいるよ!」

 

1人の感動を仲間と分かち合う。言葉を交わしながら、魚たちを見ていきます。

 

 

生命の不思議

20000匹のイワシの大水槽。

 

自分の背より高い位置で優雅に泳ぐ魚たちに目を奪われます。

 

担任はこの遠足で「感動をみんなで分かち合いたい」と言っていましたが、今まさにそれが起きています。保育園では味わえない体験です。

 

 

遠足で成長する子どもたち

マンボウ。水族館での飼育は困難と言われているそうです。その大きな身体でゆっくり泳ぐ姿は、しばらく眺めていて離れない子が出てくるほど。

 

自分たちで考えてルールを守りながら行動する練習をしたいので、あまり保育士側から声をかけず、周囲を観察して次の水槽に行くのか等を考えさせながら観覧していきます。

 

考えずに流されてしまうことがこのクラスの課題だったので、この遠足でそれを乗り越えてしまおうと思ったのです。

 

最初はその水槽に飽きても他の子が動かなければその場から動きませんでした。全員が全員そうだから、全然進まない。だけど何度も繰り返すごとに、少しずつ自分たちの興味関心で動くようになってきました。

 

 

 

ゴマちゃん

ゴマフアザラシ。人懐っこくて近くまで来てくれました。しばらく見つめ合う。なんとも不思議な体験です。

 

もう一列になってお行儀よく水槽を見ることはありません。だけど好き勝手にバラバラに動くこともない。自分の興味と集団としてのルールを守って移動するバランス。その折り合いの付け方がなんとなくわかってきたようです。

 

きっかけは大人が与えるにしても、子どもが自分で乗り越えていく姿を見るのが私は大好きです。

 

 

クラゲを見るとストレスが低下するという研究もあるそうですよ

一番人気だったのはこのクラゲゾーン。プロジェクションマッピングで彩られたクラゲは、様々な色に変化して子どもたちを魅了します。かなりの時間をここで過ごしました。

 

普通の展示より、こういうデジタルの工夫がある展示の方が明らかに食いつきが良いのは現代っ子ということでしょうか。

 

 

英語だとスターフィッシュ

タッチングプール。ヒトデに直接触れることができるコーナーです。普通に水槽を鑑賞するより、こうやって実際に触れるという体験の方が子どもたちは興味深い様子でした。

 

視覚だけより、触ったり匂いを嗅いだりした方が情報量が多いから脳への刺激が大きいんです。体験に勝る教育はありません。一番反応が良かったプロジェクションマッピングより、実際に触るこっちの体験の方が印象に強く残ったようです。

 

一番テンションが上がっていたのがプロジェクションマッピングの展示でしたが、静かに深く学びがあったのは直接体験できるタッチングプールだったということです。盛り上がっていないからこそ、静かに得るものが多かったわけです。

 

 

寄り添う心

ヒトデに怖くて触れなかった子がいました。だけど触ってみたい気持ちがある。そこに優しく声をかけ、一緒に触ろうとする子。

 

自分の興味関心を大切にして個性を発揮しつつ、他の子にも興味を持ち、みんなで育ち合う。

 

怖いけど触ってみたい。だから、仲間という安心を得て挑戦する。

 

安心と挑戦のサイクルで子どもは育つ。それはこんなところにも見られるようになりました。

 

 

アスレチックって子どもは大好きですよね

ワクワク広場というアスレチックコーナー。昔は無料だったけどコロナ以降有料になったみたいです。人数を絞ったことで遊びやすくなってます。

 

ちょうど水生生物の水槽の観覧が終わってここに辿り着くくらいの回のチケットをあらかじめ購入しています。最後に身体を使って遊ぼうという計画なのです。

 

子どもを保育士が誘導しない。だけどこの時間にここに辿り着くようにする。なかなか難しいチャレンジでしたがうまく行きました。子どももチャレンジするわけですから、私たち保育士もチャレンジする部分も入れてあります。決まりきった予定なんてつまらない。先が読めないから面白いんです。

 

 

高所恐怖症だと厳しいかもしれない

かなりの高さがあって、複雑に入り組んだ構造をしています。私も上のほうまで登って撮影してみました。

 

水生生物を見るのも良かったけどやっぱり仲間と一緒に遊ぶのが一番楽しいんですよね。子どもたちの表情を見ていれば分かります。

 

身体全部を使って、みんなで遊ぶ。不安も吹き飛んで、夢中になれる時間。遊びは無限の可能性を持っています。

 

 

最後は不安なんて全くなくなったようです。

 

 

出会いの鐘

帰る時間がやってきました。「出会いの鐘」をみんなで鳴らしてみる。

 

みんながこの保育園で偶然出会った奇跡。その喜びを鐘を鳴らして表現する。

 

この子たちの多くが入園した時はコロナ真っ只中で、先が全く見えない時代でした。不安の中で生きてきた世代と言えます。あれから数年。年長になった子どもたちは保護者から離れ、生まれ故郷を離れ、遠い地で仲間と今、笑い合っている。

 

 

おやつパーティーなんだぜ

帰りのバスはお待ちかねのおやつタイム。自分で選んだお菓子を食べます。

 

行きの車内はみんな緊張して興奮してお喋りが止まらないって感じでしたが、帰りはリラックスして楽しくて喋っている感じです。帰るまでが遠足とはよく言ったものです。

 

 

寝る子は育つ

そして疲れて寝てしまう。いつもはお昼寝をしない子どもたちだけど、この日はほとんどの子どもたちが寝てしまいました。

 

それだけ疲れたってことでしょう。遠く離れた水族館で、不安と戦いながら大冒険をした子どもたち。

 

準備は大変だったけど、遠足に行けて良かった。遊び疲れて眠る子どもを見るというのは大人にとっての幸せだと私は思います。全力で遊んだから眠ってしまう。この子たちにとって最高の1日になったはずです。

 

 

仲間と一緒に作った思い出

一年前、七夕まつりのプロジェクトで新入園の子が作った「担任と12人の子どもたち」。あの時、好きなものを聞いたら「魚」と言っていました。

 

あの時から、このメンバーで水族館に行くのは運命だったのかもしれません。

 

 

遠足とはなんだったのか

園に到着し、帰りの会をします。寝起きというのもあるけど、全然みんな頭が働いていない。ぼーっとしたまま終わってしまいました。すごく疲れています。

 

みんな帰った後、担任と話していて気が付いたことがありました。

 

この世代は赤ちゃんのころからコロナで外出できず、家族で家にいることが多かった。外は感染するかもしれない怖いところだという印象を持って育っていたのかもしれません。だから保護者と子どもの距離が物理的にも精神的にも近くなり、コロナ世代の親は子どもを守ろうという意識が強くなるのかもしれない。

 

私としては普通の「遠足」を企画したつもりが、保護者の方と園児にとっては「お泊り会」のような「親子が分離を一時的に体験する」イベントだったのかもしれません。親から離れて子どもたちが仲間と一緒に不安を乗り越える体験。それが今回の遠足の本質だったような気がします。

 

この体験は子どもを大きく成長させていくのでしょう。

 

遠足の前の遊びでお化けから逃げる遊びを繰り返していたのは、不安が高まったからだった。不安を仲間と乗り越える遊びは、保護者との分離体験の疑似体験だったということです。

 

遠足に行って初めてそれに気がつきました。こどもの日プロジェクトのテーマが「安心と挑戦」であったのと同じように、この遠足もまた「安心と挑戦」の物語だったのかもしれません。

 

 

♯11

かけがえのない思い出

遠足の次の日、思い出を絵にしてみます。

 

絵として描きやすいというのもありますが、イルカショーのイメージが一番強いようです。感動は思い出になりやすい。

 

 

♯12

大水槽の再現

遠足の余韻が残っているので、遊びは自然に水族館の再現遊びへ。

 

こちらは大水槽を表現しています。

 

 

イルカショーの再現

中央のダンボールの上にちょこんと乗っているのは4体のイルカの模型。イルカを観覧できる席をイスで作っています。イルカショーの再現ですね。

 

あるもので再現して遊んでいましたが、だんだん物足りなくなってきているようです。ちゃんと工夫して作りたくなってくる。

 

 

♯13

アスレチックの再現

本格的に水族館を作ってみることになり、それぞれ作りたいものを選びます。

 

 

ここはワクワク広場のアスレチックを作るチーム。立体的な構造を再現することに頭を使っています。

 

 

タッチングプールの再現

タッチングプールを作るチーム。岩やヒトデのゴツゴツの感触まで再現しています。水槽を鑑賞するのではなく実際に触る体験をしたので、触覚刺激が印象的だったのでしょう。それをどうやって再現するのかを工夫していました。

 

周囲に流されてしまうことが課題だった子どもたちが、遠足を経験し、今は各自が自分の頭で考えて工夫することを楽しんでいます。

 

 

バスの再現

そしてバスを作るチーム。水族館よりバスが印象的だった子どもたち。バスは遠足の象徴ですね。

 

大水槽やイルカショーはすでに再現遊びをしているので、これでほぼすべての水族館の再現が行われたことになります。

 

 

4歳児にプールの説明をしています

自分たちが作った水族館に4歳児たちを招待したい。5歳児たちの想いは後輩たちに引き継がれていく。

 

「僕たちも来年になったら水族館行きたい!」

4歳児たちからもリクエストを多くもらうようになりました。

 

 

 

楽しさを伝えたい

4歳児たちに作ったアスレチックとタッチングプールで遊んでもらう。だけど、ワクワク広場のアスレチックは少し遊んだだけですぐに壊れてしまいました。時間をかけて作ったわけじゃないので、工夫が足りなかったようです。

 

バスは完成していないので今日は絵の具を乾かしておきます。

 

ちゃんと完成してから4歳児を招待したい。壊れたワクワク広場を見て、時間をかけて完成させたいという想いが芽生えてきたようです。

 

人は失敗から学ぶ。アスレチックが壊れたことで、絵の具が乾かないことで、「次」に繋がっていきます。

 

 

♯14

郷土愛を育てる

みんなで協力してバスの制作を進めます。

市のイメージキャラクター(なまりん)を描いています。

 

偶然ですが、子どもたちが自分の生活している市のキャラクターに興味を持つことになりました。これは郷土を愛することにつながる。生まれ故郷に愛着を持つ教育にもなっています。

 

 

♯15

滑り台の再現

アスレチックは壊れないことを目指し、何度も試行錯誤して作り上げました。これはアスレチックの一部、滑り台です。1人で滑るというより、みんなで滑りたい。仲間意識の強さは相変わらずです。

 

 

バスとは何か?

完成したバスに乗り込む5歳児たち。

 

遠足って、行き先が大事なんだと思っていました。もちろん、誰と行くかも大事。だけど、こんなにもバスが大切になるなんて思っていませんでした。ただの移動手段のはずのバスが、遠足のシンボルとして子どもたちの中に強く残っている。

 

バスの語源はラテン語で「すべての人のために」という意味の「オムニバス」からきているそうです。すべての人のために。素敵な言葉ですね。

 

子どもたちを遠くの水族館へ運んでくれたバス。それは子どもたちの成長だけでなく、保護者の皆さん、そして保育士にも影響を与え、みんなで育ち合う経験ができました。まさに「すべての人のために」バスが存在したと言えます。

 

 

♯16

お弁当屋さんごっこ

まだ水族館の遠足で再現していないことがありました。お弁当です。みんなで遠足のお弁当を再現していきます。

 

おにぎり、ウインナー、卵焼き。そして初めて食べた、紫色のしば漬け。

 

完璧に再現しています。

 

 

学びは誰かに教わった時ではなく、アウトプットしたときに一番深く学べることが研究でわかっています。アウトプットとは外に出すことですね。誰かに教えるとか、文章にまとめるとか、プレゼンするとか、作るとか。そういうことをする人は、ものすごく学べるわけです。

 

例えば私がそうです。このブログのように文章にまとめたり、講演会や研修会で外部の人に話したり、職員ともよく話をしています。アウトプットが多いということは、主体性を発揮している状態ですから、学びが全然違うのです。

 

今回、遠足に行った後に、繰り返し遠足を再現する遊びをしていますが、これがアウトプットです。だから子どもの成長が全然違うんです。良い保育とはこういうことを言うのだと思います。

 

 

お昼ご飯の再現

水族館の準備は完成。今回は4歳児だけでなく3歳児も招待します。

 

 

遠足当日と同じように、ベンチに座り膝の上でお弁当を食べてもらっていますね。苦労してこぼさないようにして食べたお弁当。不思議な紫色のしば漬けの味。

 

 

あなたの笑顔は私の喜び

ワクワク広場のアスレチックの再現。トンネルや網、滑り台などを組み合わせて作りました。

 

5歳児は係の人として3歳児と4歳児を誘導しています。下級生をおもてなしすることも大切な学びとなります。自分たちが作ったもので誰かが楽しんでいる。自分が楽しいだけじゃなくて、目の前の人が楽しそうにしていることが嬉しい。そう思えるのなら、他人の喜びを自分の喜びと感じられる人に育っていくということです。

 

 

 

大切なのはリアリティ

改良されたタッチングプール。本当に水を入れて再現しています。水、石、そしてヒトデの感触。平面ではなく立体。自分たちが感じたものにできるだけ近づけていく。

 

一ヶ月前にてるてる坊主を適当に作っていた子達とは思えません。考えることが好きになってきています。

 

 

バス・ストップ

バスに学年を超えて乗り込み、出発する。バスは「すべての人のために」存在するんでしたね。今日の遊びでも、みんなのバスとして運行されています。

 

バスがあることでこの空間が遠足なんだというイメージになる。遠足ごっこになるんです。

 

 

大満足!

自分たちが楽しかった遠足の思い出を、自分たちで再現する遊び。

 

みんなで遠足に行き、体験を共有したからこそ、自分たちの水族館を協力して工夫して作り上げることができました。体験していない状態で遊んでも、ここまでの熱意を持って作ることはできません。子どもにとって「仲間と同じ体験をする」というのがどれほど大切なことかがわかります。

 

砂遊びでの海への憧れから始まり、おやつの買い出し、てるてる坊主作りなどの準備を経て、当日に不安を乗り越え、帰ってきてから3歳児4歳児を招待するために再現遊びを行う。これまでの一連の流れ全てがつながり、子どもたちを育ててくれています。

 

遠足とは、行った日のことだけじゃないんです。行く前も行った後も繋がっているわけですから、遠足だけ切り取って評価しても意味がない。

 

小学校の学習指導要領には遠足のねらいについて「体験を通して、学校における学習活動を充実発展させる」と書かれています。つまり、日常こそが「主役」なんです。遠足は日常を発展させるために存在している「脇役」ということですね。大人が考えていることと真逆です。見えているものが大切とは限らない。

 

見えないものを視て、声なき声を聴く。私たち保育士にとっても、たくさんの学びがありました。

 

「今日が5歳児クラスに進級してから一番輝いていた」と担任が言っていましたが、それだけの成長を感じるプロジェクトになったと思います。

 

遠足ってすごいですね。

 

 

以上、水族館遠足プロジェクトでした!

 

 

遠足が「導入」になり、帰ってきてからの再現遊びが「本番」になるという展開。これが遠足の本当のあり方ではないかと思いました。遠足や毎日の遊びが楽しい「だけ」じゃだめなんです。子どもたちの育ちを促進するような環境を用意し、体験で育ち合うようにしていくのが保育です。

 

この遠足が子どもたちの中で楽しかったのはもちろんですが、大きな成長のきっかけになったような気がします。行く前と後では、明らかに顔つきが違います。それは、親子の分離を経験し、少しだけ大人になったからかもしれません。

 

年長クラスとしての一年はまだ始まったばかり。

 

5歳児たちの成長はこれからです。