2345歳児合同プロジェクト、4歳児5歳児の第5回です。これまでの遊びで様々な学びがありましたが、ついに遊びに大きな転換期が訪れます。遊びのゾーンに入った子どもたちの輝き、そして最後に訪れるハプニングを乗り越えようとする子どもたちの愛と勇気をご覧ください。

 

 

♯7 (4歳児と5歳児 第5回)

フライングするほどの意欲

4歳児5歳児の第5回。2クラスで行う活動は今日が最後です。この後に2歳児3歳児の遊びが1回ありますが、それが終われば2345歳児合同というやったことのない新境地が待っています。つまり、4歳児5歳児の遊びとしては、今日が最終回です。

 

 

寿司ざんまい

前回つまらない3人での時間を過ごした女の子は最初からみんなの輪に入っていきます。学んだということです。遊ぶ相手を限定しても良いことはないとわかったのかもしれません。

 

マットを背負って「マグロのお寿司」で盛り上がる2人。

 

運動会で寿司になるレースをやっていたので、それを思い出したのでしょう。人気のバランス遊具がなくても、あるもので工夫して遊んでいます。

 

 

職人の仕事始め

部屋中のプラポイントを集め、何か巨大なものを作り出す5歳児。職人気質の彼が作り出すものは、これまでも全体の遊びに影響を与えてきました。

 

いつもは考えながら工夫して作るのですが、今回は明確に何を作るかを決めているような雰囲気があります。

 

 

子どもの目の輝きに比べて私の目の濁り具合が気になりますね

滑り台のマットの上にみんなで乗る遊びは今回も継続中。呼ばれたので近づいてみたら、私の背中に飛び乗る遊びになってしまいました。

 

これは輪投げの時と同じ。私に飛び乗る遊びが目立つと、部屋中で飛び跳ねる遊びが生まれるかもしれない。

 

活発な回になりそうです。

 

 

1人で作るのではない。仲間と作るのだ

4歳児の男の子も作るのをお手伝いしています。同じ種類で形の良い牛乳パックを厳選している。

 

ガムテープが欲しいというので、一つだけ用意しました。牛乳パックをガムテープで繋げていきます。

 

一体何ができるのか。

 

 

ドッキングステーション

不安定なマットを作って転ぶ遊びを前回から引き続き継続中の5歳児2人。その横で自分の持っているアイテムを並べる4歳児。前回の最後で5歳児の男の子と遊ぶのが楽しかったから、一緒に遊びたいと思っているんでしょう。だけど、仲間になるための「資格」がわからない。

 

こっそり、自分の置いた赤い階段マットから、5歳児が作った緑のマットへジャンプしてみる。

 

それが5歳児たちにウケて、マットの上をジャンプして転び、そして3人で笑い合う。

 

上手くいったようです。やはり、女の子と複雑なルールの遊びをするのではなく、男の子と遊ぶ方が良い。それを理解してきたのかもしれません。

 

 

忍者のような跳躍

園長の背中に飛び乗る遊び、横で繰り広げられる緑のマットをジャンプして転ぶ遊び。この2つに刺激されて、滑り台のマットから飛び降りる遊びが始まりました。

 

3歳児では危ないけど、運動能力が向上した4歳児だから許されるギリギリの遊び方です。

 

 

後ろの女の子は踊りを私に見せています(意味不明)

こちら、左は前回3人でつまらない時間を過ごした5歳児。今回は最初から他の5歳児と一緒に遊んでいます。

 

前回つまらなかった体験が強烈に残っているんでしょうね。自分は遊びを作り出す側ではないということも自覚したのかもしれません。みんなの遊びに乗っかっています。それで良いんです。

 

そして左の子と、後ろで踊っている子は青い丸である「資格」をお腹に装着しています。前回、真似しないでと拒否した行為を、今日は行なっている。反省しているということがわかります。

 

 

ハイパージャンプ!

マットをジャンプするのを思いついたのは4歳児。それが面白かったので、逆にジャンプを取り入れたのが5歳児でしたね。そのまま一緒に遊び始める3人。

 

ここでの「資格」とは「面白いアイデアを出せる」ということだったんです。面白いことへの意欲がすごい5歳児2人にとって、面白いアイデアは大歓迎。一緒に遊んでいても楽しい子であれば、なんの抵抗もなく仲間に加えます。

 

そして4歳児はすでに学んでいる。邪魔をしない。壊さない。これらを学んでいたから今日は一緒に遊べているんです。今までの失敗は無駄ではなかったということがわかります。

 

 

柔軟体操

右の子は前回、真似をしないでと強く言ってしまっていましたが、今日は自分が相手を真似るという遊びをしています。青い丸だけでなく、動きも遊び方も真似ている。

 

全くの反対ですが、これでいい。過去の発言なんて捨ててしまっていい。

 

鼓笛の時に周囲の動きを見て真似て合わせるタイプだという話をしました。遊びも同じです、周囲に合わせる方が輝くタイプなんです。

 

笑顔が、それを肯定しています。自分に合ったコミュニケーション方法というものがあるんです。

 

 

仲良しじゃないと出せない笑顔

滑り台マットの上からジャンプする遊びから、不安定な体勢になって一緒に落ちる遊びへ。

 

前回、4歳児の男の子中心にやっていた、落とす人と落とされないようにする人に分かれる遊びのイメージがみんなの中に残っていて、自分たちなりにアレンジが加わっています。

 

遊びは影響し合って変化していくのです。

 

 

寄り添う姿勢がもたらすもの

またしても遊びに入れずに泣く。泣き真似かもしれませんが、みんな心配する。優しいですからね。

 

話を聞くために、そして自分の想いを伝えるため、みんなが前屈みになります。

 

 

こうなるのはわかっていたのでカメラを構えていました!

「あ!」

 

前屈みになった結果、前方にみんなでマットごと倒れて落ちてしまいました。床とマットの間に挟まる、泣いていた女の子。

 

 

挟まれる面白さ

「大丈夫?」

「うん」

 

ハプニングでお互いに笑顔になり、このままみんなで遊ぶことに。

 

緊張からの緩和は笑いを生み出します。「笑ってはいけない」というシチュエーションは面白いんです。

 

前回、5歳児がこの4歳児の手をマットに挟んだことで笑ったというシチュエーションがありましたね。それと同じです。本質的には、この子は気持ちの切り替えのきっかけを欲しているだけで、傷ついて泣いていたわけではない。

 

だから、これで復活できる。必要なのは「笑顔」という「資格」。

 

 

プラポイントタワーの応用

少しずつ完成に近づく。仲間も3人に増えています。他の子達とは関わらず、ひたすらに作品に集中する。

 

ものすごい集中力が発揮されています。良いものができそう。

 

 

寿司も集まるカオスな状況

5歳児女子が集まってきて、赤ちゃんごっこが開始されました。世話役は、お母さんではなく今回は保育士に代わっています。正確に言えば、赤ちゃんごっこではなく保育園ごっこです。

 

同じ遊びに見えるけど、よく観察すると進化している。笑い声が絶えません。楽しくてしょうがないって感じです。

 

5歳児女子、全員集合!(お休みの子もいるけど)

 

 

この形はもしかして・・・

これは!

 

「クリスマスツリーだよ」

 

 

だよね!ついに、保育士が何も言ってないし何も誘導していないのにクリスマスをモチーフにした遊びが生まれました!

 

これはすごい。そうなったら良いなと思っていたけど本当にそうなるとは。

 

前回の「クリスマスカラーの家」、前々回の「プラポイントタワー」など、これまでの伏線を回収するかのように、ツリーが完成しました。

 

最後に飾りつけた黄色い丸は、星だそうです。

 

 

 

仲良しの印

完成したばかりのクリスマスツリーを手を繋いで眺める5歳児2人。写真には写っていませんが、バランス遊具の上に立っています。ユラユラ揺れながら手を繋いでバランスをとる。

 

不安定を楽しむ遊びですね。

 

 

危ないから面白い

わざとマットを傾けてみんなで落ちる遊び。何度も何度も繰り返される。危なすぎて下にマットを敷くアイデアが子どもたちから出されました。男の子も入って、4歳児たちで大盛り上がりです。

 

不安定を楽しむ遊び。こっちも同じです。

 

 

不安定を楽しむ遊び、子どもたちは大好きです。それをみんなで体験する遊びになっていますが、これが大人になった時に「不安を仲間と共に立ち向かい乗り越える」につながっていくのです。

 

世の中は厳しい。だけど仲間と乗り越える。それを遊びで疑似体験しています。

 

 

保育園ごっこ

5歳児女子も笑顔で遊んでいます。ゆりかごはベビーカー。前回作っていたお家は保育園。今までの全てが繋がってくる。「資格」がなくても遊べる。

 

最終回の雰囲気ですね。まさに集大成。

 

 

痛いという共通体験

マットから落ちる遊びで少し体を床にぶつけた2人。ぶつけたところを保冷剤で冷やしています。

 

ぶつけたという体験が仲間の印、それが「資格」となっている。怪我をしていない人は仲間になれない雰囲気。右から来た元気な子は2人の間には入れません。「資格」がないからです。

 

 

暴走ベビーカー

ぶつけた2人をベビーカーに乗せて運ぶ5歳児。遊びが繋がる。部屋の大移動。縦横無尽に走り回るベビーカー。

 

ぶつけた体験という「資格」を持っていなくても、ごっこ遊びの力を借りて一緒に遊ぶ。同じ体験をしていなくても、仲間になれる。2人を怪我をした園児という設定にしたわけです。だからベビーカーに乗せることができる。

 

 

女子たちの絆

クリスマスツリー作りで男の子たちが使った布ガムテープ。みんなで分けていく。ある子にとっては絆創膏。ある子にとっては包帯。湿布。共通するのは「怪我を治す」というところ。

 

実際に怪我したところに貼る子もいれば、関係ないところに貼る子もいる。

 

 

安らかな寝顔

ガムテープの絆創膏が仲間の印。これが仲間であるという「資格」になる。

 

ぶつけた子もそうじゃない子も、ガムテープの絆創膏をつければみんな怪我人(という設定のごっこ遊び)になる。

 

同じ体験をしていなくても、同じ境遇じゃなくても、学年が違っても、仲間になれる。

 

 

気持ち一つで、人は繋がれる。

 

子どもは私たち大人に大切なことを教えてくれる。

 

 

再現度MAX

「大丈夫ですか?心臓マッサージします。」

 

「みんな離れてください」

 

「1、2、3、バシュッ!」

 

AEDごっこは本格的すぎてびっくりしました。

 

傷を癒すとか助けるといイメージで繋がっているごっこ遊びです。

 

 

そういえば2学年の遊びだった

学年も男女も関係なく遊ぶ4歳児と5歳児の子どもたち。とても楽しい時間になりました。

 

 

異年齢とか縦割りとかそういう概念を忘れてしまうくらい、自然に2クラスが混じり合って遊ぶ姿は、究極の形ではないかと思います。

 

この様子を見ても、異年齢や縦割り保育はダメだと言える人はおそらくいないんじゃないかと思えるくらい、子どもたちは目を輝かせて遊んでいます。そして、それぞれの成長をちゃんと感じることができる。

 

5回の経験がつながり、素晴らしい時間となりました。

 

 

ツリーの展示

完成したツリーを移動させていく制作者たち。

 

「みんなに見せるの。もうすぐクリスマスだから」

「部屋に飾っていい?」

 

自分のためではなく、みんなのために作っていたということがここで明らかになりました。

 

そしてここで遊びの時間は終了。

 

「お片付けでーす!」と遠くから保育士の声が聞こえる。

 

一斉に片付けに入る子どもたち。当然、ツリーも片付けようとする。

 

 

ドン!!

 

崩れ落ちるクリスマスツリー・・・。

 

 

真剣さは子どもに伝わる

「なんで壊すの?!!」

「え・・・?」

 

お片付けだからツリーも分解して運ぼうとした子ども達に、なぜ壊すのかと本気で泣きながら抗議する5歳児の制作者。みんなはツリーを飾るために残しておくということを知らない。壊して運ぶのが今のルールであり正解です。壊すのはみんなからすれば正しい。

 

保育士がツリー以外を片付けるように指示しなかった時点で、私の中ではこうなることは予測済みです。これでいい。保育士の失敗ではありません。ここから何が生まれるのか。私は見てみたいのです 。

 

5歳児の本気の涙は、子どもたち一人ひとりに強烈に語りかける。自分達が何をすべきかを。この状況をどう理解すればいいのかを。

 

 

突然のサバサバ系女子

片付けを中断してツリーのまわりに集まる子どもたち。

 

毎回泣いてはみんなが集まってきていた4歳児の女の子。私のそばに来て「もう一回作ればいいんだよ。泣かなくても良いのに。」なんて小さい声で言ってきました。

 

えー!君がそれを言う?!

 

そうか。他の子が泣いているのを見る機会があんまりないから、今客観的に見る体験をしているんだ。自分も他者からはそう見えるってことに気がつく日が必ず訪れる。この体験はこの子にとって意味のある体験になるはず・・・。

 

 

こんな感じで、この状況が一人ひとりの何かを刺激する体験になっていくのです。トラブルは成長を促進する可能性を秘めている。

 

 

こういう時は5歳児しか対峙できない

「もういいよ!」と絶叫する男の子。みんな作業を中断して集まってはいますが、シーンとした空気感の中で声を発するものはいません。何を言えば良いかわからないからです。

 

「そんなこと言ったらダメだよ。みんなでもう一回作ろうよ!」

 

静寂を切り裂くように勇気を出して気持ちをぶつける5歳児の女の子。この子の心は常に誰に対しても開かれている。

 

 

感動してなんともいえない表情になっている保育士の表情に注目

「いやだよ!僕1人で作るからどいてよ!」

 

ちらっと私の方を向く女の子。私が言ってもダメだった。そういう目をしている。

 

「もう一回やってみよう」という意味で深くうなづく私。

 

勇気を振り絞り、もう一度男の子に向き合う。

 

「みんなで作る方が良いんだよ!そのほうが嬉しいんだよ!」

 

「そうだよ!」

「作ろうよ!」

「みんなで作ろう!」

 

 

やった!

みんなの心に火が着いた!

 

 

無言の対話っていうのもあるんです

拗ねて「1人で作る」と言っただけなのに、みんなが「みんなで作ろう」と声をかけて自分の意見を否定してくる。気持ちがすれ違う。

 

「どいてよ!もういいんだよ!」

 

 

「どかない」という行動で気持ちを表す4歳児の男の子。これはみんなで止めるのが仲間の印。それが「資格」となるはず。それがわかっている。言葉が苦手でも、向き合うことはできる。対話はできる。大切なのは言葉じゃない。想いなんだ。

 

「想い」で向き合う。それが対話するということ。

 

 

1人の時間で落ち着かせたいのに

「うわぁァァァ!」と言いながら部屋の隅へ。自分でもわかっている。みんなで作った方が良いってことに。だけど、今更引き返せない。素直になれない。

 

やはり一番に駆け寄る4歳児の女の子。君の良さは何も変わっていない。その純粋さが相手にも伝わるはず。

 

そしてお母さん役だった5歳児の女の子が優しく寄り添う。

 

お化け屋敷でも今回のプロジェクトでも、何かあったときに1人になって気持ちを整理してきた男の子です。それが今回は1人になれない。みんなが優しくて放っておかないからです。1人で気持ちを落ち着かせたいのに、みんなが優しくしてくる。逆に感情がぐちゃぐちゃになる。

 

 

どうすればいい?

子どもたちに言葉での解決はできそうにない。

 

事態を打破するために必要なこと・・・。

 

 

笑っているのは照れがあるから

「ヒーロー参上!!」

 

遠くにいて事態の成り行きを見守っていた5歳児男子。自分をヒーローと名乗り、颯爽とみんなの前に現れ、ポーズを決める!

 

空気が変わる。勇気が湧いてくる。ヒーローとは勇気のある人のことじゃなく、人々に勇気を与える人だと誰かが言っていたのを思い出しました。

 

私の方を向いてポーズを決めたのは照れがあるから。照れてまた遠くに行こうとしていますね。このままだとこの流れは止まってしまう!

 

私が出した結論は、ヒーローに任せること。この子なら流れを変えてくれる。

 

「ヒーロー、頼むよ」

 

ニコッと笑うヒーロー。

 

「みんなができないことを僕はできる!僕に任せてよ!」

 

そうだ。きみはすでに知っている。

 

 

「失敗したっていいんだよ」ってことを・・・!

 

 

作り直すのが大事なのではないのです

「ほら、こうやってさ、これ星でしょ。完成だよ」

 

ヒーローを中心に何人かが手伝い、ツリーは一応の完成を見せる。

 

「違う!そうじゃない!」

 

形やプラポイントを重ねる順番が違うと文句を言い、また部屋の隅に移動する制作者の5歳児。もう引き返せない。本当は嬉しいのに、文句しか言えない。

 

 

作り直されたという「結果」が大事なのではなく、みんながどのような気持ちで作ったかという「過程」が大事。だから形が直ったから良いということにはならないのです。

 

壊されたことに落ち込んで怒ったわけじゃない。みんなのために作った自分の気持ちをわかってもらえていないから怒ったんです。ここがわからないと、今起きているのが何なのかが理解できません。

 

 

1人の方が良いのか、それとも・・・

今度は別の5歳児と4歳児が寄り添う。静かな、それでいて優しい言葉をかけていく。

 

仲間の優しさが嬉しい。だけど、逆に素直になれない。

 

きっと自分でもどうしていいかわからないんです。こんなにも人に優しくされた経験がないから。いつもおちゃらけているから、真面目に人と向き合ってこなかった。この状況に戸惑っています。

 

そして、お化け屋敷プロジェクトの当日にこの子は体調不良で休んでいます。みんなで作り上げるという体験を彼はできていない。あの感動を知らない。

 

だから、このツリーをみんなで作ることができれば、他の5歳児と同じ体験を共有したことになる。それが6年間を一緒に過ごした仲間の「資格」になる。

 

 

具体的な行動による救済

「ああ、ここが違うのね」と指摘されたところを確認して修正するヒーローたち。あくまでも行動で寄り添う。優しい言葉じゃなく、必要なのは実際にツリーをどうにかするという行動。

 

気持ちに寄り添うのは女の子たちに任せたということかもしれません。これも役割分担です。

 

 

涙の理由

「ほら、みんな作り直してくれてるよ」

 

状況を整理して伝えるお母さん。

 

わかってる。わかってるんだ。

 

みんなに背中を向けていたけど、今はみんなの方を向けるようになりました。少しずつ、心を開いている。

 

あと少し。何かきっかけがあれば。

 

 

そして繋がる心

「また壊されないように部屋の端っこに移動しよう」

「そっち持って」

「私こっち抑えるから」

 

みんなが自発的に手伝い始める。初めはヒーローだけだったけど、行動する子が増えていく。

 

想いは伝わり、そして行動で示される。

 

そう。必要なのは「想い」ではなく「行動」。気持ちを行動で表すこと。

 

 

みんなに任せるという体験

全員で協力してツリーを部屋の端っこへ移動させる。壊さないように。慎重に。だけど確実に前進させていく。

 

 

それを見つめる5歳児。みんながやってくれている。僕のために。いや、みんなのツリーのために。

 

自分の作品は人に触らせたくなかった。アトラクションにみんなが集まった時に嫌な気持ちになったこともあった。だけど、今、自分で作ったものを100%仲間に委ねている。

 

これが信頼です。信じて、頼る。信頼という意味を、5歳児が学んでいく。

 

 

 

協力したいという想いの共有

先に土台を持っていき、進路を確保する子。ツリー本体を運ぶ子。支える子。

 

みんなで一つの目的に向かって協力しています。4歳児も5歳児も関係ない。一緒になって同じ目的に向かっていく。

 

これがプロジェクト型の保育。主体的・対話的で深い学びの実践です。

 

大人の押し付けではなく、子どもたちの心の底からやりたいことが一致した時に起こる、輝き。一体感をみんな感じている。仲間の印はツリーを作り直すこと。

 

もう「資格」は必要ない。みんな、やりたくてやっているのだから。

 

「想いをのせた行動」はすべてを超えてくる。

 

 

2つの遊びが繋がるツリー

それぞれがやれることをする。ついに部屋の端っこを定位置としてクリスマスツリーが作り直されていく。カラーボールは飾りとして使われる。

 

というか、カラーボールなんて4歳児5歳児の遊びでは用意していなかったはず。

 

実は2歳児3歳児で使っている牛乳パックと4歳児5歳児で使っている牛乳パックは同じものです。2歳児と3歳児が牛乳パックに詰めていたカラーボールが、そのまま4歳児5歳児の遊びで出てきたのでしょう。

 

思いがけない2歳児と3歳児からの贈り物です。

 

今、2つの遊びが一つになる。

 

 

最後は君の手で

どうしても一つ見つからないカラーボール。そこで、私が制作者の5歳児にゴムボールを渡しました。最後の完成は自分自身でしてほしい。みんなで作り直すというこの過程に喜びを感じてほしい。願いを込めてボールを投げて渡す。

 

キャッチする5歳児。

 

「これで完成だよ!」

 

新しいクリスマスツリーが完成しました。ちゃんと、みんなで作り直したツリー。みんなを信頼した上で、自分も参加する。

 

これで本当の意味で「みんなで作ったツリー」となりました!

 

 

お披露目式

3歳児クラスを呼んで、説明します。これはみんなのツリーであること、大切にしていること、壊さないでほしいこと。ちゃんと3歳児たちにも伝わったようです。

 

これはお兄さんお姉さんが大切にしている。3歳児にも、それが言葉ではなく心で理解できています。

 

 

インタビュー

最後に私から「みんなで作ってみてどうでしたか?」と5歳児の男の子に質問をしてみます。この時間がなんだったのか、みんなで共通認識を持つ必要がある。そして、本当は素直になりたいのになれなくて怒ってばかりになった男の子に、挽回のチャンスを与えるために。

 

「本当はみんなと作りたかったから、嬉しいです!」

 

笑い声が起こる。

良かった。ちゃんと言えるじゃないか。みんなにも伝わったと思うよ。

 

 

緊張からの緩和で笑いが起こる

最後は笑顔になって、みんなで喜びを表現し合う。

 

 

失敗したっていい。何度だってやり直せばいい。みんなでやればなんだってできる。そういう体験になったはず。

 

達成感も一体感もある。最後にそういう遊びになったのはすごいことです。

 

 

時間的にはこれで終了ですが、まだツリーに完成していない部分があるので続きがやりたいという話が出たため、給食の後に時間を作ることにしました。

 

 

木に寄せていく

男の子たちを中心に、よりツリーらしくするために幹の部分をガムテープで覆っていく。

 

あれほど壊さないように運んだのに、一度全部外してしまっていますが、それは何度でもやり直せば良いというイメージの共有ができているからです。

 

ちなみに最後に私が渡した緑のゴムボールですが、運動会のパラバルーンでボール送りをしている時に練習で使っていた思い出のボール。5歳児の仲間の象徴でもあります。

 

 

みんなのツリーになる

女の子たちも力を合わせて作り直します。

 

写真には写っていませんが、後ろでは4歳児たちがみんな応援している。みんなで作る、みんなのクリスマスツリー。

 

 

満足のいく出来になったようです

そして完成するクリスマスツリー。

 

この体験は、みんなの絆を深め、新しい何かをきっと生んでいると私は確信しています!

 

暦の上でもクリスマスが近づいてきている。みんなで楽しむクリスマス会が近づいてきている・・・。

 

以上、4歳児5歳児の第5回の様子でした。

 

まさかのクリスマスモチーフの遊びの出現で終わりかと思いきや、壊れてからの作り直しの流れに。すごかったですね。

 

普通に完成させるより、一度壊れてみんなで作り直したという「過程」にものすごい価値が出たんじゃないかと思います。

 

人は体験で理解するというのは繰り返しお話していますが、もっと言えば、物語で理解するんです。物語性が出た遊びは、子どもたちへの浸透度が違う。理解が、影響が違います。今回に至るまでの5回の活動の全てが、ここにつながっています。素晴らしい時間でした。

 

ツリーが壊れた後に勇気を出して声をかけた女の子とヒーローの男の子は、私の励ましがなければ行動の持続ができなかったということを最後に付け加えておきます。

 

大人が関わらずに子どもだけの力で解決したと子どもたちは思っている。そういう体験、そういう物語になっています。しかし、その背景には保育士による最低限の支えがあったということです。私の励ましがなければ、何も解決できずに終わっていたでしょう。

 

子ども主体と保育士主体。両方揃わなければ奇跡は生まれない。これが「共主体」の保育です。

 

さぁ次は2歳児と3歳児の最終回。こちらも誰にも予想できないような物語が誕生しています。