4歳児の七夕まつり劇プロジェクト、前回は織姫と彦星のお仕事を体験する遊びを行いました。ここから少しずつゴールに向かって進んでいくのですが、まずはみんなが興味のある制作から行なっていきます。
♯3
織姫は結局自分の服、つまり本番で着る衣装を作っていたのと同じです。そのため、誰の衣装ができていて、誰の衣装がないのかを視覚的に理解するために顔写真とハンガーを用意しました。
誰もがわかる理解の仕方。それを追求していくのが良い教育、保育だと思います。
顔写真に大盛り上がりの子どもたち。意欲も引き出せて一石二鳥です。
自分の衣装が終わっていない人は続きを、そもそも作っていかなかった彦星は1から自分の衣装を作り始めます。
自分の好きな色で、それぞれが好きなように作っていきます。みんなが織姫になって仕事をしているというごっこ遊びと同じことです。
前回から衣装を作っていた2人はすぐに完成してしまい、暇になって紙の筒で遊び始めました。足を筒の中に入れて「人魚!」「アリエルだよ」と人魚ごっこが始まります。
人魚姫の「ヒレ」は複数人で乗り込む「船」に変化しました。
ヒレをそれぞれが身につけていた1人の「平行遊び」から、複数人で一緒に遊べる「集団遊び」へ。遊びが進化します。
「船に乗る子」と「船を転覆させる子」と「船を前に進めようとする子」が自然発生して集団遊びへ。
役割分担をして遊んでいるのはレベルが高いんですよ。それを自然にやれるのが、この子たちのすごいところです。
そのまま2つの船が誕生し、船遊びが始まりました。天の川を渡るイメージでしょうか。頭のどこかに七夕のイメージがあるから、こういう展開になるんです。
衣装作りはほぼ終わっているから、みんなで遊びたくなっているのかもしれません。
そこへブルーシートを使い、水に溺れる演出が。船では天の川を渡れない。橋が必要であるという認識へつながる遊びです。原作をなぞっています。こちらが誘導しているわけじゃないのに、そうなっていくのが面白い。
溺れていたらパーテーションにぶつかって倒してしまい。誰かが下敷きになってしまいました。助けるために力を合わせてパーテーションを持ち上げ、救出する子どもたち。
「せーの!」と力を合わせて仲間を助けます。
下敷きになっていたのはこの子。一年前にパーテーションの下敷きになってみんなに救出される遊びを繰り返していた子です。あの時はわざと下敷きになっていましたが、今日は意図せず下敷きになってびっくりしていました。
もう意味のない遊びで面白いとは思わない。前のように誰かに助けてもらう確認の遊びをしなくても、仲間が助けてくれるなんてもうわかってる。この子はお友達との絆を信じています。
一年越しの伏線回収です。
そこから、みんなでパーテーションの裏に行ったり、走ったりと大盛り上がり。みんなで楽しむ時間を経て、今日の活動は終了しました。
これで衣装は完成。まだ劇の練習は全くやっていないけど、みんなで笑顔で遊べていることの方が大事です。
♯4
前回溺れたブルーシート。これを天の川にしようというのが今日の活動です。衣装作りは個別の活動ですが、これは集団で一つのものを作る活動。特に狙ったわけではありませんが、順番的にはとても良い流れになりました。
もちろん何をどう飾るのかは子どもたちの自由です。天の川であるというイメージの共有だけ行なっています。
最初はそれぞれが個別に飾り付けをしていましたが、徐々に一緒に作る子たちが出て来ました。星を繋げていきます。
それを見て新メンバーも星を繋げていきます。
星を繋げるということはどういうことかを少し考えてみましょう。
例えば七夕の菱飾りは「人とのつながりや夢が続いていくことを願う意味が込められている」と言われています。菱飾りは星のつながりを表現した飾りです。
つまり「星を繋げる」ということは「人とのつながりが続いていくことを願う行為」なのです。
誰かと繋がっていたいと願う、この子の心が表れているんじゃないかと私は思います。
そこから発展して、オレンジの星を隠す遊びが始まりました。どこかにオレンジの星を貼り、他の子に見つけてもらう遊びです。
天の川を作るだけでなく、その過程を楽しもうとする子どもたちの知恵ですね。
だんだんと思考が高度になり、完全に隠すためにはどうしたらいいかを考え出しています。
これが試行錯誤することが楽しいという体験です。
星のつながりはどんどん長くなっていきました。
それを見て「すごいね」と肯定的な言葉をかける子どもたち。
星を繋げたことで、自分と誰かを繋げていく。
男の子たち。天の川作りをしないで、コマを作っています。当時、空前のコマブームが起きていて、レゴブロックでもコマを作り、自由工作でもコマを作るような状態でした。仕方がないんです。子どもの興味関心がコマにある以上、それを作りたくなってしまう気持ちを否定することはできません。
保育士としては悩む場面だと思います。指示と違うことをしているのですから。
ですが、実は「保育士が指示」しているわけじゃないんですよね、この時間は。子どもたちがやりたいことをやっているだけです。だから天の川を作ろうがコマを作ろうが、本来は自由なんです。
というわけで、何をするのも自由な時間ですから、園長に飾り付けをする子が現れました。
最高の表情をしていますね。まさに「イタズラしちゃうぞ」って感じで、子どもらしくて良いと思います。
どんどん集まってきて、園長に飾りをつけていく。この後、全身にテープを貼られてしまい収集がつかなくなってきたので、担任が集合をかけています。
飾りが終わってきているので、七夕のお話をみんなに思い出してもらいます。天の川にかける橋は、鳥の群れなんですね。カササギという鳥です。カササギを繋げて橋を作るのが次にやることであることを子どもたちに思い出してもらいます。
それぞれが自由にカササギを繋げています。みんなで一つの橋をかけるという方向性にはなかなか行きません。繋げては崩れ、繋げては崩れを繰り返し、少しずつ橋が作られていきます。
ついにカササギの橋が完成しました。まだ貼り付けていないのでブルーシートの上に置いただけですが、こういう感じになるよ、というのはみんなの中で共通認識を持てました。
左右からカササギの橋を渡ってきて、出会って抱き合う2人。織姫と彦星の再会を再現して遊んでいます。
一段落したところで、また園長に飾りをつけようとする子どもたちが出てきました。すると、「ダメだよ!」と園長を守ろうとする子どもたちも出てきました。
少しずつ人数が増えていきます。
守りの人を出し抜いて園長に飾りをつけようとする子と、園長を守る子。2種類の役割に分かれて戦いが始まりました。
そのうち、園長に飾りを貼るとかそういうことを忘れて、全員で追いかけっこが始まりました。
「鬼は誰?」「〇〇くんだよ!」と普通に鬼ごっこです。
自然とクラスに溶け込む新メンバー。
自分であんなに一生懸命作った星繋ぎを床に放置し、みんなと鬼ごっこ。
彼が欲しかった願いは、今、ここで叶っているんですから・・・。
第四回がここで終了です。どうだったでしょうか。クラスが一つになっていく様子がわかっていただけたんじゃないかと思います。
新しい子が入ると、その集団はやはり別物に変化します。だからこそ面白い。新しい関係性の中で、様々なドラマが生まれる。それが良い。子どもたちにとっても新しい出会いは刺激になります。
さぁ、次回、子どもたちに大きな試練が待ち受けています。全く劇をしていないのに劇プロジェクト、次回に続きます!