345歳児合同クリスマスマーケットのプロジェクト、最後になります。その4です。23歳児合同、45歳児合同の流れから来ての最終回となります。リハーサルと事前準備、そして当日の様子を解説していきます。

 

♯12

どんな色が好き?

リハーサルとなる第12回。最初に財布を作っていきます。お金を箱やタッパーにしまう子がいたので、お買い物ごっこに財布は必要だろうと考えました。お買い物感も増すので、この財布を使用してリハーサルを行なっていきます。

 

 

地味に成長している3歳児クラス

最初に作り方は示しましたが、3歳児でもすんなり作り始める事ができました。これまでいろんな制作をしてきて、制作スキルが格段に上達している。制作スキルとは、自分が思ったように物事を加工したり工夫するスキル。問題解決のために必要なスキルです。

 

 

4歳児クラスも安定の成長を見せてくれる

そして4歳児クラスも上達が早かった。絵だけでなく文字を書いたり、紐の長さもバッチリです。なんていうか、素直な子が多い。クラスの仲もとても良い。ダンボール遊びや遊園地作りでの下地を経て、このような成長につながっている。

 

 

紐の貸し借りも完璧

リボンや毛糸など、紐も自由に選ぶ事ができます。3歳児ですから、必要に応じて保育士が手伝うこともありますが、大体1人でこなしてしまいます。

 

使いたいリボンが被ったら、「ちょっと待ってて」と言いながら順番待ちをしてシェアして使えていました。素直に感心します。5歳児中心に見てきたけど、もっと3歳児と4歳児を見ていたかったなと思いました。

 

 

5歳児が3歳児より遅いのは考えられないです

片付けの時間になっても終わっていないのは5歳児クラスだけ。あと10分。5分、2分、1分とカウントダウンしてたんですが、ダメでした。やっぱり制限時間内に合わせて遂行するのは苦手なようです。

 

のんびりしているか、自分の納得がいくまでやるタイプが多い。そして何より、おしゃべりが多い。仲が良すぎるというのもあるんですけど、時間は守らないとやはりダメです。

 

私から「5歳児クラスだけ終わっていませんよ。周りを見てください。」と指摘。そこで初めて自分たちが遅いことに気がつく。大人から指摘されないと理解できないことがあるのが子どもです。こういうのを放置していくとルールを守れない子になる。小学生で時間が守れないのは致命的です。今のうちになんとかしないと。

 

 

必ず挽回するチャンスを与えるのが保育のポイント

次はリハーサル。3歳児と4歳児がお店の準備をしている間に5歳児が園長のもとに集合。先ほどの時間に間に合わない件を挽回するために、お菓子の家の運営を必ず成功したいことを伝えます。

 

まず、女子中心の運営が上手なチームのやり方を男子たちに見せていきます。何の係が必要なのか、どこに配置すべきなのか。一つひとつを女子チームから男子チームに説明していく。

 

 

本番に向けて最後の調整

お店準備については、テーブルの上に赤と緑のエリアを作ったこと、そして紙皿を用意したことが前回までとは違うところです。物を用意だけしたら、ご覧の通り。食べ物と飾りを分け、食べ物もお皿に盛り付けています。

 

 

この2人が受付に来るとは思わなかったですね

さぁ、前半の女子チームがうまくやれたことは当然として、問題はこちらの男子チーム。ワンちゃんと3号のコンビが受付に。しっかりと仕切っていきます。

 

女子チームのやり方をさっき見たのが良かったのか、必要最低限のやり方がわかって今回は進められそうです。

 

 

子どもの発想の面白さ

この日、女子たちが作り出した、新しいルールは男子たちにも引き継がれていました。それは財布の預かり。ダンボールの中を通る時に財布が邪魔になる。入り口でお預かりして、出口で参加者に渡す。そういうシステムになりました。

 

 

人は慣れる生き物なのです

お買い物ごっこも、財布とお金、そしてお皿の存在で深みを増しています。青いビブスのお店に入れなかった3歳児も、ついに接客をできるようになりました。ここまで全12回。継続は力なり。

 

 

プロなら女子会にも入ることが可能

お菓子の家の運営の前半、女子チームと男子1人。今はお買い物の時間です。「女子会なの。誰かの旦那さんが1人入っているの。」と言っていました。リアルですね。お買い物ごっこも、リアル女子会ごっこで楽しんでいます。

 

 

これでリハーサルも終了。準備も次回で終了。本番が近づいてきました。

 

 

♯13

ピンチはチャンスですよ

第13回。明日が本番ということで全員で会場飾りを作っていきます。実は、これまで準備や仕切りを行なっていた3歳児担任が発熱して今日と明日の本番に園に来れなくなってしまいました。

 

そういうわけで、園長が仕切ります。と言っても前日と当日では「子どもの力を発揮させる」くらいで良いというのが私のやり方です。成功させようとすれば大人の力を入れればいくらでもできる。そこを、子どもだけの力でやってみるからプロジェクト保育なんです。すでに全員に成長が見られているので、実質、成功しちゃってます。本番はおまけみたいなものです。結果ではなくプロセスを評価する。そういう視点が子どもを伸ばしていく。

 

 

3歳児の自由制作ってこんな感じなのね

明日は本番だね。クリスマス会の飾りをみんなで作ろう。ここにあるものを自由に使って。作ったら、ここと、ここと、ここに飾ってね。

 

それだけ言ってスタートです。

 

3歳児に自由に制作してもらうとどうなるのかなとワクワクして見てみたら、金色の折り紙に意味もなく黄色を塗っている。ああ、うん。そういう感じなんだ。

 

「ここに塗っても見えないんだけどー」と私に報告してきます。

 

そりゃそうだろう。自分で気づいているのか。面白いなぁ、3歳児クラス。

 

 

鏡に飾るねらいとは

できたら部屋に飾る。まずは、手洗い場の鏡。何をどう作っても良いし、どう貼っても良い。いつも貼ってはいけないところに貼れるのも面白いと子どもが感じるポイントです。

 

鏡に貼り付けようとすると、貼り付ける自分の姿を自然と見ることになる。より自分でやっている感じを視覚的に印象付ける事ができます。

 

 

正解なんてないんだ

3歳児の飾り。金色の折り紙をそのまま窓に貼る。それも良い。自由。やりたいようにやればいい。芸術に常識なんてないんだから。表現は無限の可能性がある。金色に黄色を塗って見えないというのは、シュールレアリスム芸術だと考えれば、意外と深いかもしれない。

 

 

自由に作るのを見るの楽しいですね

5歳児クラスになれば、自由制作もレベルが上がっている。これは2人でひとつの作品を作る様子です。手伝うのも当たり前になっている。

 

 

学年関係なく起こるなら、それは園の雰囲気ですね

3歳児だって、手伝うのが当たり前。テープカッターを押さえてあげる子。手伝ってとか言ったわけじゃない。自然と体が動いている。

 

 

立体物も多く貼られている

キラキラ光る太陽の光。そこで輝く子どもたちの作品。何を作ってもにこにこして面白がる保育士の雰囲気が、子どもたちのやる気を促進する。

 

窓に貼ってある飾りを指差して「これ、〇〇ちゃんの作ったやつでしょ」と言うと満面の笑みを返す子どもたち。この日の私は345歳児全員が何を作っていて、ちゃんと飾りをつけたのか、何個作ったのかを全部覚えていました。どんなことに夢中になり、何を工夫し、何に困っていたのか。できる限り全部覚えている。不安そうな子には声をかけ、進みが遅い子には終了時間を思い出させる。面白いと思ったら、面白いと笑って伝える。そうすると、意欲が引き出され、この時間に飾りが完成しなかった子は1人もいなくなります。全員が本当の意味で生き生きと参加することができる。

 

子どもからすれば「僕を見てくれている」という喜びも感じられる。これが、「見守る」という意味です。後でどの子の様子についても誰かに語れるように注意深く全員を観察しながら保育をしています。だから私はこうやってブログで鮮明に当時の様子を記述できるわけです。

 

 

かに

子どもたちの最大の興味を引いたのは、この作品「かに」です。目が飛び出ているかに。クリスマスに何の関係があるかは分かりませんが、なんでもOKです。楽しければOK。遊びなんだから。

 

 

部屋中の飾りを見てみよう

時間内に片付けまで全員完了。財布作りの時に間に合わなかった5歳児も、今日は全員成功です。ここで成功しなければ、クリスマスマーケットは時間内にできなかった思い出になってしまう。今日は私が仕切るんであれば絶対に成功させる。そのつもりで行なっています。

 

後ろを振り返ると、今日作った飾りや、前回3歳児と4歳児が作ったクリスマスツリーが。

 

 

見学ツアー

最後はみんなで見学ツアー。全員で列になってぐるっと部屋中を見て回る。自分の作品とお友達の作品を見て回る。明日のクリスマス会が楽しみになっていく。

 

 

かにはみんなを笑顔にする

かにに群がる子どもたち。ぐるっと右から回ったのは、最後にかにを見せるため。かにがみんなを笑顔にしてくれると思ったからです。そんな小さな工夫も保育士が場を仕切る時のテクニックの一つです。

 

さぁ、前日準備も終わり、いよいよ明日は本番です。

 

 

♯14

いつの間にか保育士に撮影されていた写真

本番の仕切りも園長の私です。どうせなら毎日子どもたちと一緒にいたいですよね。プロジェクトの時だけだと、どうしても特別感になってしまう。日常こそ大事。毎日を一緒に過ごせたら、もっと素敵に、もっとお互いに成長していくと思うんだけど。

 

 

主体性を発揮させる仕切りとは

今までと同じように5歳児がみんなにお金を配っていきます。本番である今回、あまり仕切りを強くしていません。あえて細部を指示したりもしない。子どもたちがこれまで学んできたことを発揮してもらうだけで良い。行事の雰囲気も特に出しません。そうすると保育士たちも自分で考えてそれぞれが動いてくれる。みんなが自分ごととして動き出す。これが主体性の発揮。

 

 

上の方にみんなで作った看板も飾ってありますよ

前半戦スタートです。商品の陳列も自由だし、特に何も言っていません。子どもがこれまでに学んだものだけが出てくる。それを私は見てみたい。私たちがやってきたプロジェクトは、どういう結果を子どもたちにもたらすのか。

 

 

財布も活用できていますね

ちゃんと盛り付けてあるし、接客もちゃんとしています。初回の適当なお店屋さんごっこから比べると雲泥の差があります。お店屋さんは5歳児がいなくても3歳児と4歳児だけで堂々と行えています。

 

青帽子のお店は全部横一列で商品を陳列し、店員さんも横一列でしたよね。本番では、商品をトングで取り分ける子、お金のやり取りをする子、商品を追加して並べる子に分かれて接客をしています。つまり、分業です。

 

 

会場全体としてはこういう感じ

左上のカーテンレールに飾ってある緑色の丸は子どもたち手作りのクリスマスリース。プロジェクト以外の時間もクリスマスに向けて作ったりしていました。

 

前半の女子中心のお菓子の家は順調に運営できています。流石です。

 

 

泣いても笑ってもこれでラスト

後半戦スタート。勢いよくお買い物に向かう子どもたち。012歳児のクリスマス会も同時に行われているため、園長として両方を行き来しながら撮影しながら345歳児のクリスマス会を仕切る私。なかなかしんどい。

 

 

お客さんがいない間に陳列し直す

オレンジビブスのお店。包丁を持って調理する子、お皿を並べて盛り付けをする子、そして全体の陳列をし直す子。こちらも分業が行われています。それぞれが自分で仕事を見つけてくる。これが主体性の発揮であり、子ども同士の対話が行われている証拠です。

 

 

最後に相応しい活躍

薄紫帽子のお店。バックヤードから商品を運ぶ3歳児。そして陳列して準備する4歳児。やはり分業。みんな遊びが深まっていますね。異年齢保育をして良かった。この子達はお店屋さんに参加できていなかった子達。今では、しっかりと遊びに参加している。

 

 

配置が神がかっている

5歳児のお菓子の家。男子チーム。前回受付を行い中心として活躍したワンちゃんがお休みで、いきなりのピンチ。亀さんが「僕がやるよ」と3号と一緒に受付へ。以前はダンボールの中に閉じこもった子が、今はダンボールのお菓子の家の入り口で仕事をする。

 

何回か前にダンボールの中に入ってしまった科学者は、この後なんとダンボールの上に乗って上から中の様子を観察するという方法を思いつきました。あの日のきっかけは、ダンボールの上で描きたかったのに別の子が使っていて使えなかったこと。今はその時に使いたかった場所の上に乗っている。過去の気持ちを塗り替えている。

 

出口付近はゾンビに生き方を説いたマスターヒーローと黄色のヒーローの2人。彼らが後方で控えていれば安心です。

 

 

おままごとのレベルを超える発想

「ここはね、赤いところが無料の商品で、これを目当てに人が集まってくるでしょ?そしたら緑の商品を売るんだって。頭良いね。」

 

最後にとんでもない商売の天才が現れました。3歳児と4歳児がそんなこと思いつくのか。いや、もう成功で良いでしょう。クリスマスマーケット。子どもたちの成長がすごい。

 

 

終了1秒前

そんな感じで残り1秒。お菓子の家は潰れてきて、支えないとその形を保てなくなってきました。まるで、もう役目を終わるかのように。

 

よく見てみれば、商品である食べ物も飾りもボロボロ。ボロボロになるまでたくさん遊びました。自分たちで作ったもので遊ぶ体験。何度も何度もやることで、少しずつ工夫していき、遊びが深まっていった。店員とお客さんのやりとりも活性化し、店員さんたちは分業が当たり前になった。1人で遊ぶんじゃなく、みんなで遊ぶという体験ができたんじゃないかと思います。

 

 

ありがとうございました!

というわけで、2ヶ月に及ぶ345歳児合同のプロジェクト、クリスマスマーケット、いかがでしたでしょうか。

 

一回一回で見るより、こうやって流れを追っていくほうが子どもたちの成長がよくわかるなぁと、まとめていて思いました。5歳児中心ではありましたが、幼児クラス全体としての変化も感じ取っていただけたのではないかと思います。

 

3歳児も4歳児も、春の単独クラスのプロジェクトの時から考えると信じられないくらいの成長を感じました。運動会を乗り越えると子どもは変わりますが、まさにそういう雰囲気もありました。年度の後半が保育の真骨頂です。秋から冬にかけてのこのクリスマスマーケットの体験は、また子どもを変えていくんだろうと思います。

 

そして5歳児。遊園地作りから続く、一人ひとりの心の開放の物語となっていましたね。本来、4歳児5歳児の遊園地作りは今回のお菓子の家作りみたいな展開にするつもりだったんです。それが意図せずに達成できたことは、なんだか不思議な感じがします。

 

ダンボールは心の壁。心の壁を合わせて「家」にした5歳児。5歳児全員の安心できる場所を作りました。それは入口もあれば出口もある。呼び鈴もあるし、扇風機で新鮮な風がいつでも入ってくる。大好きなポケモンもいるし、友情の証が上部にたくさん張り付いている。みんなの個性がきらりと光る、素敵な作品ができました。

 

そして季節は冬へ。

 

生活発表会、そして卒園に向けた最後のプロジェクトが子どもたちを待っています。