345歳児合同のクリスマスマーケットその2です。前回までは、それぞれのチームに分かれて作っていく様子をご覧いただきましたが、それがだんだんと変化しながら前に進んでいく様子をご覧いただきます。

 

♯5

今までの素材がズラリ

食べ物チームも飾りチームも今までいろんなものを作ってきましたが、自分が作りたいものを自由に作ってみようという試しの第5回。作り方を覚えているのか。新しい何かを作ってしまうのか。一旦、この子達が今までの4回で学んだものを見てみます。

 

 

チキンを紹介し忘れたことに気がついた(ショック)

こうやって見るとみんな作りたいものが違うみたいですね。右の方に「チキン」を作っている子がいますね。前回、写真で紹介しなかっただけで一度作っているものです。

 

 

何個も作る喜び

紙コップの飾りも登場です。こうやってみると、自分が作りたいものを作っている時の表情って良いですね。右の2人は同じものを何度も作っていますが、それだけ好きってことですから。何回作っても飽きない。

 

 

ポケモンの吸引力は健在

5歳児のお菓子の家作り。まだポケモンの箱がありました。またもや協力して切り取っています。興味がお菓子の家ではなくてポケモンに移ってしまったとすると、前回の私がやり過ぎてしまったということになる。失敗だったのか?

 

 

内側に貼るという成功体験の連鎖

そうではありませんでした。ポケモンドロボーから、みんなのためのポケモン飾りへ。やっぱりダンボールの内側に飾り付けてるけど、持ち帰らないという選択肢をしっかりと選んでいます。前回の失敗を自分で取り戻す。それができるのがすごい。

 

 

継続は力なり

お店屋さんも何度もやるうちに商品の陳列も上手くなってきました。種類ごとに分けるのが当たり前になってきた。

 

 

イメージは繋がっている

みんなで買ってきたものをお菓子の家に付けていきます。エアコンを電気屋で買おうという案が子どもから出ましたがお金がないのでこれで勘弁してくれと出したのが、黒いポータブル扇風機。そして購入してきた風車と組み合わせてどうやって設置するかを試しながら話し合っています。

 

ちなみに風車。先日、近隣の小学校の芸術鑑賞会に5歳児クラスが参加させていただきました。そこで鑑賞した劇の中で出てきた印象的なアイテムに風車がありました。友情の証の風車。それを覚えていたのかもしれません。友情の証。それをみんなで作るお菓子の家にくっつける。

 

 

お家っぽくなってきましたね

インターホン代わりに呼び鈴、ベルを購入しました。ダンボールに穴を開けて、差し込み、固定しています。外から中の人を呼ぶ。だから内側にベルが付いている。

 

「聞こえるー?」「聞こえてまーす!」

 

大人になるってこういうことさ

順調かと思いきや、気分が乗らない子たちが。ワンちゃんと修理屋さん。話を聞いてみると「みんなで作ろうと言ったのに、やりたい人が扇風機とかやっちゃってさ。みんなで作ってないじゃん。あとさ、ちゃんとやりたいのにふざけてるんだもん。」と言っている。

 

みんなで作る、ふざけない。繰り返し確認してきたことがちゃんとこの子たちの中に入っている。さすが修理屋さん。だから、みんながテンション高く笑いながら作っているこの状況が気に入らない。

 

 

プロはやること全部がプロ

気持ちを落ち着かせるために箱を意味もなく切り続ける2人。その様子に気がつき、みんなから離れ2人に寄り添うプロ。一緒に箱を切って気持ちを理解することを思いつく。

 

 

プロは慰められ方もプロ

ハサミを取りにロッカーに行くと、持ち帰ろうと思っていた塗り絵が破れていることに気が付いたプロ。ショックを受けてリュックを背負い、家に帰ると言い出します。落ち込んでいたはずの2人も、お菓子の家を作っていた子も集まり、どうしたんだと話を聞き、プロを慰めます。

 

 

すぐに行動に移せるのが良いですね

みんながプロを慰めている間、破れていた塗り絵をセロハンテープで修復する修理屋さん。いつもみんなのことを考えているだけでなく、率先して行動に起こせる子です。原因となった塗り絵を修復することで、プロの心も修復していく。

 

箱を切り刻んで自分の心を落ち着かせていたのに、今はお友達の塗り絵をテープで修復しています。全く正反対の行動をしているのに、お友達の塗り絵を修復しているほうが何倍も自分の心が満たされていく。自分の落ち込みが消えていく。誰かのために何かをすることが、一番自分らしい。

 

 

みんなの関わりで、プロも落ち着きを取り戻し、またしても仲間で支え合う様子を見せる5歳児クラス。みんなの遊園地作りは、まだ続いている。

 

 

♯6

これを見て前回のラストを思い出す子どもたち

第6回。前回ワンちゃんと修理屋さんが切っていた箱の残骸を誰かが床にぶちまけてしまいました。一瞬にして前回の状況を鮮明に思い出す5歳児たち。あの時の気持ちも思い出す。

 

 

自分で乗り越えるって、こういうこと

関わりのあったワンちゃん、修理屋さんに加え、あの時自分の方が取り乱してしまったプロ、そしてなぜか手伝うレインボー、そして写真には映ってませんがヒーローも別の場所で片付けていきます。

 

自分でやってしまった責任は自分でとる。自分の心が作り出した不要な感情のゴミは、すべて拾ってゴミ箱に捨てる。みんなに手伝ってもらいながら。それで気持ちも晴れていく。

 

 

調理や下準備という遊び方

お買い物ごっこ。お店屋さんに新しい動きが。右手に包丁を持って、注文を受けた後に調理してからお客さんに渡しています。ただ商品を売るのではなく、加工するという遊びが誕生。より、ごっこ遊びが深まっています。

 

 

分業の誕生

こちらは分業ですね。バックヤードから商品を集めてお店にいる人に渡している。全員が売る役割をするんじゃなくて、店員さんそれぞれがやるべきことをして協力して売るという状況が作られています。

 

相手を意識し、自分を意識し、お店で売るという目的を共有しながら協力する。協同的な遊びが生まれてきている。保育士は何も教えていない。繰り返す遊ぶ中で自然発生的に生まれています。

 

 

謎イベントの発生

飴玉を大量に購入した3歳児のお客さんが、それをみんなに配って歩くというイベントが発生。普通に買って自分で食べるという遊び方が変化し、様々な工夫が見られるようになってきました。

 

ちなみ、飴玉を受け取っている4歳児は、美容師さんに髪を切ってもらっているところです。役割を考えた遊びがだんだんと全体に広がっているのが分かります。

 

 

ついにこの時が

ここで初めて5歳児のお菓子の家の利用が3歳児と4歳児に解禁されました。自然と役割分担が生まれ、運営の始まる5歳児たち。まずはお客さんたちを整列させます。4歳児に分業が生まれてましたが、同じタイミングで5歳児の分業している。6回目となると工夫も熟してくるものです。

 

ちなみにこの時間は、お菓子の家に来ても良いし、お買い物を続けても良いという自由な時間になっています。

 

 

生き生きと労働する子どもたち

大行列に興奮する5歳児たち。

 

「すごい人気じゃん」「やったー!」

 

並ばせる人、入り口で受け付ける人、出口で出てきたら入り口に合図を送る人、壊れた箇所を修理する人、中の様子を確認して全体に報告する人。

 

「僕はこっちをやるね」「お願い!」「こっちオッケーでーす」「はーい」「停電でーす、修理入りまーす」「一旦ストップでーす」「修理終わりましたー」「ありがとうございまーす」

 

 

そういう発想がすごく良い

行列で待っている人たちに飴玉を差し入れするサポーター。そうですよね。これはお菓子の家なんですから。こういうサービスがあっても良い。

 

これはさっき、飴玉を配っていた3歳児の男の子の影響だと考えられます。年下も年上もない。良いものは積極的に取り入れる。

 

 

頭がキレッキレですわ

待機列が待つ場所をガムテープのバミリを作ることによって分かりやすくするアイデアも子どもたちから。

 

「これで毎回私が言わなくてもわかるようになるんだよ」と説明していました。

 

 

隣には友情の風車

壊れた扇風機も協力して修理する。1人でできなくても知恵を出し合って直していきます。

 

 

ヒーローというより職務質問をする警察官ですね

お家の内側にはポケモンがたくさん貼ってあります。それが一つなくなるという事件が。

 

「はい、ちょっと確認しまーす」

「きみ、ポケモン持ってないよね?」

「ポケット確認して良いかな?」

 

テキパキと一人ひとり確認していく。5歳児は全員、ポケモンドロボーは許しません。

 

 

満足そうな顔

5歳児全員の協力により、初めてのお客さんを入れてのお菓子の家は大成功に終わりました。

 

終了後、どうだったか話を聞くと「もっと丈夫にしたい」「壊れてしまったところがあった」「中で頭を打った子がいるから中を広くしたい」など次々と意見が。これらは次回以降の改善案につなげていきます。

 

このお菓子の家の係の仕事は完全に子ども達のみの力で生まれたものです。私はノータッチです。やっぱり、こういうのが一番良いですね。最高の気分です。

 

 

♯7

労働の喜びを知る

前回、お買い物ごっこにもお菓子の家にも手応えを感じた保育士たち。第7回で次に導入するのは「お金」です。子どもたちの中でお金のやり取りが頻繁に出てくるようになったので、本格的に導入することにします。このように、子どもたちの遊びを観察し必要なものを足していくのが保育環境の設定の基本です。

 

今回、3歳児と4歳児は「何かを作ったらその対価に見合ったお金をもらえる」というルールを設定しました。自分で稼いだお金を使って、後でお買い物ごっこをする。保育園で労働をする遊びをしてみます。

 

3歳児と4歳児ですので、ある程度保育士側で遊びの方向や物を設定する必要があります。子どもだけでは辿りつかない。子どもと保育士のコラボレーションで進んでいく。

 

 

報酬があるのは意欲が出る設定のはず

前回と同じく、何を作っても良い。だけど、作る商品の大変さによって、支払われるお金の金額が変わっていくシステムです。

 

 

初給料に笑顔

初めてのおつかい、ではなく、初めての労働。幼児なのに労働。大人になった時に働ける子になって欲しい。今のうちに労働の喜びを感じてもらいましょう。

 

この子は簡単なジュースを作っていますね。それも知恵です。量産して稼ぐタイプ。中には単価の高い難しいものに挑戦する子も。働き方にも個性が出ます。

 

 

お金が増える喜び

最初は労働の意味がわからなかった3歳児クラスも、周囲で商品とお金を交換していく様子を見て、全員が理解していきます。言葉の説明で理解させようとせず、体験で理解できるようにしていく。そうでなければ3歳児でこういう学びを進めていくことはできません。

 

お金が増えると嬉しいみたいです。「こんなにお金持ってるんだよ!」という会話がいろんなところから聞こえてきます。

 

 

秋のパンダ祭り

お菓子の家の改善を進める5歳児たち、のはずが、箱のパンダを切り取る子が出ていました。ポケモンを切って貼った体験が強烈に残っているんです。

 

この後、切り取ったパンダをお菓子の家の内側に貼り、全部で○個あるパンダを全部見つけたら成功という、新しいアトラクションを作り出しました。お菓子の家にルールを追加して書き足します。

 

これはお菓子の家であり、遊園地のアトラクションになっています。つまり、5歳児の遊園地作りプロジェクトはまだ続いている!

 

 

なぜこの2人がやっているのか考えてみましょう

よく考えてみれば、クリスマスマーケットのシンボルになるお菓子の家なんだから、家の中に入れなくても良いし、エアコンをつける必要もない。中を通るのがメインであれば、完全に遊園地のアトラクションですね。

 

偶然できた穴に扇風機を埋め込み固定する2人。前々回、みんながちゃんとやらないとやる気を無くしていたワンちゃんと、それに寄り添ったプロです。数回を経て、自分たちで工夫してふざけないで家作りに貢献しています。あの時の想いはゴミ箱に捨て、今新鮮な気持ちで取り組んでいます。

 

 

周囲に向ける集中力を目の前だけに向けるとこう変わる

自分のやるべきことに覚醒した3号。大きな看板が必要だと言い、一心不乱に書き続けます。まるで芸術家のように。何も目に入らず、何も聞こえない。超集中力を発揮させ、納得のいくまで作品を作り上げていく。

 

 

繁盛店にお金が集まる

3歳児と4歳児は労働によって得たお金を使ってお買い物ごっこがスタートしました。今までとは明らかに違う、お買い物ごっこのやり取りの質。お金が導入されただけで、遊びが深まっていきます。

 

「これは1000円でーす」「200円のお釣りでーす」などと会話とやり取りがとても増えています。最初に担任が「やり取りが増えるようにしたい」と言っていましたが、徐々にそうなっていっていますね。

 

 

開店できない

3歳児と4歳児でお買い物ごっこがスタートしてしまい、焦る5歳児たち。本来、同じタイミングでこちらもオープンする予定でした。だけど準備が終わらないならお菓子の家が始められない。しかし、3号は気難しい芸術家のように満足がいく作品が仕上がっていないので描き続けている。この看板が終わらないと、みんなのお菓子の家は始められない。

 

 

3号が真剣にやっているからみんな強く言わない。ふざけてるわけじゃないから何も言わない。だけど始めたい。そういう葛藤状態をみんな体験しています。

 

なんだか大人になってきた子どもたち。

 

 

お金が入ったので陳列が疎かになってますね

3歳児と4歳児のお買い物ごっこはいよいよ佳境に入ります。全部のお店に品物が並び、お客さんも途切れることなく入ってくる。

 

そして遊びの時間は終了してしまいました。5歳児のお菓子の家は間に合わなかった。

 

 

こういう時どういう反応すれば良いか迷う

間に合わなかったことで責任を感じ、看板を破く3号。でもふざけていたわけじゃないし、悪気があったわけじゃない。みんなそれをわかっている。だから、誰も責めない。

 

こういう時は、はい、修理屋さんの出番ですね。すぐにかけらを集めてテープで留める一番弟子。期待を裏切らないですね。そして3号のそばにはレインボー。もはや安定の布陣で3号を癒していく。

 

 

大きな揉め事もなく解決

その看板をみんなでどうするか考える。

 

「わかった。ここにつければ良いんじゃない?」と科学者。

 

「いいね」とみんな賛同。全員でお菓子の家を作る。そのイメージは確実に身についてきているようです。

 

 

その2では、ちょっとずつ成長していく子どもたちの様子をお届けしました。これで半分です。まだ本番まで長いですね。

 

何かをやってしまっても、その後に必ず挽回するというパターンが続きました。普通に見ているだけでは、子どもが自分で過去の失敗を乗り越えていることに気がつかないだろうと思います。こういう気づきがあれば、子どもをもっと信じられるようになるし、もっと愛することができる。私はそう思っています。

 

そして、遊園地作りが続いている確信を得ることができました。そうなんです。これはあの子たちの、続きの物語なのです。