4歳児シリーズです。ダンボール遊びから連続して、今度は七夕まつりの準備に取り掛かります。3歳児は歌、4歳児が劇、5歳児は合奏の発表をすることになったので、4歳児クラスは劇の導入からやっていきます。
♯1
用事があって最初から参加できず、遅れて園長が保育室に行くと、寝っ転がっている4歳児の姿が。どうも、七夕まつりで劇を披露するというイメージが湧かないようです。お話も七夕にちなんだお話を担任が用意したのですが、それもイメージが湧かない。
本来、子どもが興味がある題材を選んだり、関心があるテーマを用意するものですが、それがうまくいっていない。子どもが劇のテーマや内容を決めるのが一番良いのですが、ダンボール遊びが盛り上がって日数を使ってしまったため、それをする時間がなくなってしまった。それで担任主導で進めたことで、こんなことになったわけです。
従来の保育や幼児教育は、保育士や幼稚園教諭が考えた内容を強制的に一斉に子どもにやらせるというものでした。このやり方は現在は国から否定されています。
うちの園では遊びが楽しすぎて、子どもたちはちょっとやそっとの「面白そう」には反応しません。前回までのダンボール遊びの展開なんて、大人がねらってやらせることなんてできないですから。
なんていうのかな、いつも美味しいもの食べてるから舌がこえてしまってチェーン店の料理や冷凍食品は美味しくないので食べませんみたいな。遊びのグルメになってしまったというか。私はチェーン店の料理も冷凍食品もとっても美味しいと感じますけどね。
ただ保育士が決めたことをやらせるだけなら簡単なんです。叱って無理やりやらせればいいんですから。ここでは、そんなことはしません。担任も試行錯誤しながら進めています。
丸くなって、どうするかの話し合いが行われます。
「なんかね、元気が出ないの」
「エネルギーがなくなっちゃった」
「そうそう」
疲れた中年おじさんサラリーマンみたいなことを言い出す4歳児たち。子どもには子どもの疲れとかあるんでしょう。この日は月曜日でしたが、月曜日の子どもたちってみんな疲れてるんですよね。日曜日に家族でお出かけとかして疲れているのかもしれません。
突然倒れる子が。
「あー、エネルギーがなくなったー!」
「私も〜」
「僕も」
エネルギーが切れて寝っ転がる子どもが続出します。突然のアドリブ芝居は面白いですね。そう来たかって感じで。このあとどうなるんだろうなぁと色々想像しながらワクワクしながら私は見ています。
よく考えたら「劇の練習をまったくしないでみんなで寝っ転がっている子どもたちを園長が写真を撮りながら見ている」という状況ですよね。厳しい園長なら保育士に説教とかするんでしょうかね。私は面白いなと思って見てますけど。
本当に疲れているなら、1時間ゴロゴロしても良いと思うんですよね。それが子どもにとって一番必要なことであれば、それもまた教育活動です。休憩するっていうのも人生には必要だよねっていう教育になる。
そんなことを考えながら見ていたら、「私のエネルギーをあげる」と一人ひとりを回ってパワーを送る子が。前回までお母さんだった子ですね。さすが大家族を育てたお母さんです。
それに触発されて起きている子が倒れている子にパワーを注入していきます。
というわけでみんな元気に復活しました。こういうの良いですよね。保育士が無理やりやらせるんじゃなくて、遊びながら元気になるっていう、この過程がすごく良い。
これについても予測をしていました。保育士は焦る必要なんてないんです。そもそも全員が疲れてやりたくないということは、あるわけないんです。みんな違う人間なんだから。これは、「疲れているごっこ遊び」です。リアルか遊びかはよく観察すればわかる。「遊び」は「遊び」で変化する。「疲れているごっこ遊び」は「パワーをあげる遊び」で変化しました。本当に疲れていたらお友達にパワーをもらったって動けません。復活したのが、遊びだったという証拠です。
元気も戻ったところで、仕切り直しです。
このやる気を消してはいけない、ということで、やり方を変えていきます。
彦星は牛を飼っていて世話をしているというお話だったので、遠くに行ってしまった牛を捕まえに行って戻ってくるという遊びにしてみました。
大きなぬいぐるみを牛ということにしています。自然とみんな笑顔になりますね。劇をやらせようとしないことがコツです。彦星たちには、牛の世話をする遊びをしてもらえば良いんです。
織姫は、布を織って服を作っているというお話だったので、畳まれた布を広げるという遊びにしてみました。
こちらも、織姫が布を織るとか服を作るというお仕事をしているわけですから、布系を使った遊びをしていけば良い。今回は布ではなくてマットでやってますけど、導入としてはこれで良いんです。
導入としてはこれで終わり。次回から劇の流れや立ち位置の確認をしていきます。
♯2
この日は園長が急用で参加できず。園長って暇に見えて忙しいんですよ。急に何かしらの対応が入るので、こういう日もあります。
この日は役の最終決定と簡単な流れの確認を行なっています。
初回のように全くやらないということはないけど、ものすごく意欲的ではないように見えますね。シナリオ通りにどうやって動くかを繰り返して理解していきます。
さて、子どもたちはここまであまり乗り気ではない状態ですが、ここからどう変わっていくのかが保育士の腕の見せどころというわけです。3歳児のほうも新聞紙遊びは良い感じだったのに、七夕まつりの準備の初回は急にうまくいかなくなりましたよね。自由遊びから急に方向転換するからうまくいかないんですね。子どもだって戸惑います。車もカーブを曲がる時に減速しますよね、あれと同じです。当たり前の流れです。
ここからあと2回で、どのように変化していくのか。七夕まつり本番までの過程をご覧いただきたいと思います。