4歳児の夏の水遊びの様子を追って行きましょう。

コロナになる前はプール遊びを行っていましたが、密になりすぎるということでプール遊びは中止に。コロナ禍になってからはタライを使った水遊びになっています。

水遊びは事故のリスクが高いのでプールではありませんが、保育を担当する職員とは別の職員を監視員として配置しています。

今回は水遊びを5回ほど観察してみましたので、その話をしてみます。遊びに連続性を持たせるとどう変化するのかを感じてください。

 

#1

 

まずは今年初めての水遊びの様子を見てみましょう。

 

金魚すくいが人気

7月です。気温は高いのですが、雨が降りそうという雰囲気です。

 

環境設定としてはある程度の水遊びグッズを自由に使って良いというルールです。まずは金魚すくい的な遊びが人気になりました。これはこの前の週に七夕まつりを行っていて、年長さんの金魚すくいを体験していたことも影響しているのでしょう。大人からすれば行事は行事という認識ですが、子どもの中では遊びがつながっているのです。

とりあえず色々なおもちゃを試す子どもたち。

 

お湯の力

 

少し雨が降ってきました。どうせ水遊びで濡れているのでお構いなしに遊んでいます。

この日はタライにお湯を入れていました。「あったかーい」とはしゃぎ、1人がタライに入ると、全てのタライに1人ずつ入る結果になりました。「お風呂みたーい。」

最初はおもちゃの「機能」で遊んでいましたが、水とお湯の温度差を全身で感じることで「感覚」中心の遊びに変化しました。

 

水たまりの魔力

おもちゃで遊ばなくなり、ただ雨に打たれて水溜りに入ります。地面で温められた泥水の感覚と雨の感覚の違いを全身で感じる。服が濡れて体に張り付く。濡れた服に重さを感じる。足裏に泥の感触。水面に広がる波紋。雨の音。

 

家庭ではこういうことできませんからね。こんな日があっても良いかもしれません。遊んでいないように見えて、これはこれでしっかりと遊んでいます。

 

 

#2

 

第二回ではタライに水を入れてあります。お湯ではありません。

さぁ、どうなると思いますか?

 

おもちゃと水で遊ぶ

はい、こんな感じで全員がタライに入ってお風呂遊びにはなりません。奥の子は入っていますが、全体のムーブメントにはなっていない。おもちゃを使うことがメインの遊びになっています。このように、水の温度を変えるだけで子どもの遊びが変化します。面白いですね。

 

 

#3

 

第三回ではおもちゃの選び方に変化が見られました。

 

躍動感のある写真

個別に遊ぶのではなく、お友達に水をかけるための道具やおもちゃを選んでいます。お互いに水をかけ合うことを楽しんでいます。

 

欲しいのは水だけ

そのうち、タライをひっくり返して水をかけ合うようになりました。まあ、そうなりますよね。これは乳児では力が足りなくてできないので、幼児ならではのダイナミックの遊び方です。

 

池を作る

タライの水がなくなると水遊びになりません。困る子どもたち。そのうち、水を一箇所に集めて池を作る様子が見られるようになりました。泥の池です。協力して水を集めます。

 

 

真似したくなるよね

こんな感じで、作った泥の池にみんなで入ります。入るというか寝てるんですけどね。泥遊びは子どもの成長にはすごく良いものだと思っています。保護者の皆様、お洗濯を大変にさせてしまってすみません。おかげさまで、すくすく育っております。

 

 

#4

 

第四回では開始早々、タライをひっくり返して泥の池を作りました。遊びはつながっています。

 

泥遊び再び

同じ位置に泥の池を作っています。ただし、今回はみんなで泥に入るというわけではありません。前回の遊びで満足している子は別の遊びをしています。影響し合いますが、周囲に流されて遊ぶわけではないんですね、ちょうど良い集団の関係性だと思います。

 

このあと、泥の池を作りたい子たちが、全てのタライをひっくり返してしまいました。おもちゃで遊びたい子たちからすれば迷惑行為です。遊びの中で対立構造になることはよくありますが、意地悪をしたくてタライをひっくり返したわけではありません。自分がやりたい遊びをしていたら結果的に相手の遊びを邪魔することになったということです。

こういう時は止めずに一度、観察してみます。どのような解決方法を考え、どういう行動に出るのか。子どもを信じてじっと待ってみます。

 

覆水盆に返る!?

「覆水盆に返らず」ということわざがあります。こぼれた水は戻らないのと同じで、一度起きてしまったことは二度と元には戻らないという意味ですね。

 

おもちゃで遊びたい子たちが、泥の池からコップで水をかき集め、タライに戻しています。しかも楽しみながら行っています。嫌々ではないんです。

 

何度も何度も水をすくい、タライがいっぱいになりました。覆水盆に返る瞬間です。思っていた以上に全員が幸せになる解決方法が出てきました。

 

不平不満を言ったり喧嘩するのではなく、行動によってお互いに共存する未来を切り拓いたわけですね。大人たちがみんなこんなだったら、戦争なんて起きないのかもしれません。遊びを見ていたはずなのに、世界平和について考えてしまいました。遊びって深いですね。

 

 

#5

 

第五回では遊びが一巡した展開が見られます。

 

秩序を取り戻す

 

第一回のお風呂遊び、第二回のおもちゃ遊び、第三回の水かけ遊びが混じり合い、第四回で学んだ「水を無駄にしない」という暗黙のルールで楽しんでいます。

 

幼児にとっての教育とは遊びである。子どもの成長というのは遊びの中で行われる。そして、それは子どもにとっての体験によって変化がもたらされる。

 

それがどういうことなのか、少しだけわかったような気がしました。