4歳児おうち作りプロジェクト第四回です。このシリーズでは「ストーリー分析」で解説を行なっています。
前回は「ロボットという共通の敵の前に一致団結した人類はこれを退け、ついに外の世界、新天地へ向けて旅立つ」という終わり方でした。
この投稿から読んでいる方は、「え?保育園の遊びの紹介じゃないの?」と驚かれますよね。書いている私も、もはや意味が分かりませんが、子どもの遊びを分析したら自然とこうなってしまいました。ぜひシリーズの最初からお読み下さい。
やはり世界観が一新されている雰囲気です。ネコが新しく家を建てています。建築家の力を借りることなく、自分たちで作ることができるほどに成長しました。相談し合いながら形にしていきます。
ネコごっこと言えば、第一回の再現ですね。
このように遊びは深まった時に一巡することがあります。そして一巡した場合、前回より一段階成長した形で展開されることが多いのです。この場合は、「前回は建築家に作ってもらった家や塔に住んでいたネコが、今回は自分で作って住んでいる」という主体性の変化と成長があるということです。
ちなみにこの後、ネコ達は学校を開いたり、パンを焼いたり、薬を作ったりしています。新しい世界では人間よりネコの方が文明が進んでいるようです。
え?
ここは人間ではなくネコが支配する世界?
前回までは子どもたちにあまり意識されなかった園長や保育士ですが、新天地では子どもたちから「視える」ようです。園長の周りに怪しげな結界を張り巡らせ、「ここから出ないでね!」という厳しいルールが課せられました。この子は今流行りの「呪術師」と名付けましょう。
子どもの世界の外にいる大人は「異物」であると同時に物事を決めたり解決する「権力者」でもあります。「神様」という言い方もできるかもしれません。
ここはネコが支配するだけでなく、人間が神様と共存する世界のようです。
ちなみに園長が結界から出ようとするたびに呪術師に見つかり、結界内に戻されました。どこで遊んでいても飛んでくるので、自分の役割とやるべきことを徹底しています。責任感があるんですね。こういう子が大人になってしっかりと仕事をする子になるのではないでしょうか。
人間たちの様子を見てみましょう。建築家チームが協力して塔を作っていきます。これも第一回から続くお馴染みの光景ですが以前は建築家1人がメインで作っていたのに対し、今回は「〇〇くんはそっちをお願いね」「そうそう」などと指示したり任せたりしながらチームで作っている雰囲気が強まっています。明らかに成長してます。
塔の完成後は塔の周りをぐるぐる回るという謎の儀式が行われます。今日の世界観は前回までとは違うようです。何か神秘的な雰囲気を感じます。
よく考えたらネコは学校に行っているのに人間は塔の周りをぐるぐる回っているという文化レベルの違いがありますね。
やはり人間はネコに支配されている?
この後、塔をネコに壊されてしまいました。これも第一回の再現ですが、ただ遊んでいたら塔を結果的に壊してしまった第一回と違い、今回のネコは明確に「壊す」という意思を持って壊していました。
ネコによる支配は、人間が塔を作ることを許さなかったようです。もう確定ですね。
この世界はネコが人間を支配しているのです!
人間の方が文明が進んでいるという常識からの脱却。私たち大人の理解を超えた遊びが展開されていきます。子どもの世界って本当に面白い。
塔を壊された人間たちは神様(担任)に助けを求めます。
神様と人間が橋を作ったのを見て、その橋の下を通行するネコたち。ネコのために働いているように見えます。ネコによる人間の支配は続いているようです。
人間だけに任せておけないということなのか、ネコも入って全員で力を合わせて巨大な建造物を作りました。「協力する」という大きな意思のみが存在します。誰がリードするわけでもなく誰が壊すわけでもありません。
人間だけで行うよりネコが入った方がすごいものができています。これはネコの方が文明が進んでいるからです。このエピソードからも完全に人間はネコの下であることが分かります。
前回は共通の敵としてのロボットのおかげで残り全員の人類の心が一つになりましたが、今回は誰を犠牲にすることなく全員の心が一つになっています。
役割を演じることでまとまったのではなく、目的を共有することで心を一つにしているというのは「ごっこ遊びから協同遊びへの変化」が起こってきているサインです。
建造物が壊れた後、残骸に水筒を置くという遊びが始まりました。カウンターに見立てて「いらっしゃいませー」「水筒やさんです」と見立て遊びが展開されます。実際に自分の水筒を買い、飲む様子が見られます。
これはごっこ遊びの中に現実の物体を使用し、実際に飲むという行動をも含ませた高度な遊びです。リアルとファンタジーの融合です。例えば自分の水筒以外を飲むと成立しませんし、飲む真似でも成立しません。現実と虚構を両方線引きしながら融合して遊んでいるのです。
建築家チームは「水筒屋さん」となり、生計を立てます。ディズプレイを工夫したり呼び込みを行ったりしています。作ることの喜びから、物を売る喜びへと変化したようです。ビジネスの視点というか経営者の視点への変化ですね。
もう一つの解説としては、ネコと共同作業をしたことで人間たちの文明が発展したということです。第一回で建築家からネコが教わって人間に進化したように、今回はネコから人間が教わるという構図です。完全に逆になっているんですね。
水筒が落ちそうになって置き方を工夫していましたが低いところでも倒れることもあります。倒れて中身のお茶がこぼれてしまいました。ごっこ遊びだったのに急に現実の問題が浮上し、動きが止まる子どもたち。
よく見たらオーナーがこぼしてますね。前の世界では自分の店舗を持っていたのにこの世界では水筒屋さんで働くバイトの身分です。生きるって大変です。
「大変だー!」
「拭かないと!」
「みんなー、急いでー!」
と全員で慌ただしくペーパータオルを大量に集め始めました。
先ほどは巨大な建造物をみんなで作るという一体感がありましたが、今回は現実の問題にみんなで対処するという一体感です。
ごっこの世界で一度体験したことは、次から現実の世界でも行いやすくなります。これが遊びの力です。遊びをたくさん経験することは現実で生きる力を増やすのです。
ここで全員で「水害」を防ぐという経験をしました。水害は世界中の神話でモチーフになるほど、科学技術が発展するまでは人類にとって身近な脅威でした。科学がさほど発展していない今回の世界観でこういう展開になることも面白さの一つです。
今日も塔を壊す「フリ」をしてるだけなのに建築家チームに嫌がられて落ち込む心優しきロボット。傷つくたびにネコが作ったおうちに戻って寝たり、パンを食べたりしていましたが、「お薬だよ」と唯一気遣ってくれたのがこの子でした。
この子はネコたちの世話も全部行う「お母さん」みたいな存在です。ロボットも愛を知り、自分の居場所を見つけたようです。
水筒屋さんで水筒を買い、お母さんのおうちでお弁当をもらい、みんなは小学校に向かいます。ネコも人間もロボットも一緒です。種族の違いを超えて仲良くなったようです!
前回は人類の統一でしたが、今回は種族を超えて仲良くなるという展開です。差別のない世界ですよ。どうしてこう、良い感じの着地をするんでしょうね。
第一回 自然と人間の争い(自然災害)
第二回 人間同士の争い(戦争)
第三回 人間全員の一体感(戦争のない世界へ)
第四回 種族を超えた一体感(差別のない世界へ)
こういう流れで来ています。順調に成長していってますね、人類は。
いかがでしたでしょうか?
これまでの回に比べ、今回は地味な印象を受けるかもしれません。地味ですがラストに繋がる「つなぎの回」になっています。
今回は前回までの行われた遊びの再現が多く見られました。一見同じようでも、内容が深まっていたり成長を感じることができました。また、クラスとしての初めての一体感も生まれています。ある意味遊びとしては完成形です。
ネコの支配する世界に辿り着いた人類が神様と共存することで最後にたどり着いた結論は?
次回、おうち作りプロジェクト最終回、乞うご期待です!