3歳児、4歳児、5歳児の活動を4月から追いかけてきましたが、ついに最後のプロジェクトとなりました。大型企画のクリスマス会を書き上げたので、もうそんなに大変じゃないだろうと写真を振り返ってプロットを立ててみたところ、歴代最長のシリーズになることがわかりました。クリスマス会や七夕まつりの倍のボリュームです。

 

読むのも大変だとは思いますが、最後にふさわしい子どもたちの輝きが見られますので最後までご覧いただけると幸いです。

 

それでは、345歳児合同プロジェクト「お別れ会」スタートです!

 

 

#1

今回の企画は3ヶ月にわたる活動の記録になります。初回は1月です。クリスマス会では3クラスがバラバラに準備を行なって当日に合流するという構造になっていましたが、今回のお別れ会では3歳児クラスと4歳児クラスが一緒に活動をします。

 

自分達にプレゼントを作ってねという恐ろしい企画

初回はいつものように導入です。

 

クリスマス会では4歳児がダンスの発表、3歳児が会場の飾り付けを行いましたが、今回はより「人と人の繋がり」を感じられるような体験をしてもらいたいと保育士が考えていました。

 

そこで、制作意欲の高まりを下敷きに5歳児クラスの子にプレゼントを行うという内容を考えました。これは4歳児の中から出てきたアイデアでもあります。子どもたちから出てきたアイデアを保育士が膨らませたというわけです。

 

3歳児や4歳児ではまずはどういうものなのかのイメージを持たせることが大事なので、練習として「誰かにプレゼントをするために製作をする」という活動を行なっています。

 

身近な人間でなければ練習にならないのでプレゼントをあげる対象を担任にします。「担任の私は、こういうものが好きだから、私が喜びそうなものを作ってね!」ということですね(そんな言い方はしませんが、ニュアンスはそういうことですよね)。なかなか無茶な注文でしたが、子どもたちはノリノリで製作に入りました。

 

ホワイトボードに2人の担任が好きなものをイラスト入りで紹介することで、子どものたちの中に何を作ると担任が喜ぶのかというヒントを与えておきます。

 

 

2クラスが混じり合う

「○○先生は喜んでくれるかなー」などと会話をしながら製作をしていきます。

クラスでテーブルを分けるでもなく、混ざり合って座り、影響し合いながら作っていますね。

 

これくらいの年齢では、自分で作ったら自分のものと考えて家に持ち帰りたいと主張する子が多いので、家族以外の誰かのために作るという体験はほとんどありません。自分が作りたいものと、相手が喜びそうなもの、この2つのイメージを融合させていくことは、思っている以上に難しいのです。

 

 

リボン

初回の完成品です。ピンクが好きな先生だからピンクを使うとか、プレゼントだからリボンをつけるとか、なかなかに工夫をしていますね。

 

そして、これはクリスマス会で5歳児クラスからもらったプレゼントを、今度は自分達が作ってプレゼントし返すという構造になっています。つまり、5歳児クラスの作品を無意識に真似ていたり影響されて作っているんですね。そこにはクラスを超えた心の交流があるのです。

 

 

#2

 

これを行なっている当時はコロナ感染者が全国的に多く出ているときだったので、2クラス合同保育は止めるべきではないか、プロジェクトは交流メインなので中止にするべきか等の葛藤が私の中にもありました。そのため、市内の感染のピークが去り、生活発表会が終わるまでは中止にしていたので前回から一ヶ月空いています。

 

3歳児4歳児クラスの続きです。

 

メロンにメロメロン

メインの活動ができない間に、5歳児クラスの子ども一人ひとりにインタビューを行い、何が好きかを聞き取っており、それを写真やイラストで冊子にしています。3歳児4歳児が混ざって5歳児の誰かの担当になり、それぞれ個別にその子のことを考えながら作るという形になりました。

 

メロンが好きだという子にプレゼントするために、メロンを描いています。メロン味のアイスの容器も廃材から探してきていますね。

 

メロンを描いている子は、自分の作りたいものやりたいことを行うことが先に出るタイプだったのですが、誰かのために自分のクリエイティブな能力を発揮することを楽しんでいる様子が分かります。ここにも1年間の成長を垣間見ることができますね。

 

 

彼のカレー

こちらはカレー好きの子に対してカレーを描いています。例えば「カレーが好きなんだって」と伝えても写真がなければ具体的にイメージを持ち続けながら作るのは年齢的に難しかったと思います。これは冊子を作った保育士の工夫と愛情が、この子たちの想像力を膨らませた結果です。

 

子どもの主体性を発揮させる保育とは、保育士が何もしないことではありません。子どもが伸びる環境設定を作ることをサボってはいけないのです。

 

 

プレゼント第一弾の完成

3歳児クラスもいるので、なんだかわからないものもありますが、子どもたちはそれぞれが5歳児のために心を込めて作っていました。3歳児4歳児の活動はこのように全体の解説重視で行おうと思います。

 

 

#3

 

一方、5歳児クラスは詳しい遊びの展開や個々の成長を語っていきたいと思います。もし過去の記事を読んでいない方は、ぜひ一年前から順番に読んでいただけると印象が大きく異なると思いますので、過去記事からの閲覧を推奨します。

 

 

自然に教え合う関係

最後のプロジェクトです。これが終われば卒園して小学生になる。ここまできたら、子どもだけの力でプロジェクトを行えるのか、試してみたくなりました。

 

お別れ会で何をしたいのか聞いたところ「絵本を作ってプレゼントしたい」「絵本を3歳児4歳児に読んであげたい」の2つに絞られました。こちらが誘導したわけでもないのに、最後にふさわしい活動になりそうです。プレゼントするのか読んであげるのかが曖昧なまま、製作がスタートしました。

 

作り方も何も保育士は教えず、物だけ用意してスタートしたところ、本のようにページをめくれるようにするにはどうしたらいいかを教え合う姿が見られました。幸先の良い始まり方です。

 

 

もこもこ

教えてもらった製本の仕方に、自分の作品を書き込んでいきます。タイトルは「もこもこ」で内容も赤ちゃん絵本をイメージしているようです。字ではなくシンプルな絵で表現しています。

 

こういうふうに作りたいというのがあって自分で試行錯誤するのが好きだけど誰かに教えてもらうことはあまりなかった子でしたが、素直に受けれてその上で自分のやりたいことを実行しています。何気ない行動に、成長を感じずにいられません。ピタゴラスイッチをみんなで作り上げたからじゃないでしょうか。人と協力する喜びを学んだのかもしれません。

 

 

コピーとオリジナル

奥の子は園にある絵本を参考にコピーするという絵本の作り方で、手前の子は自分の頭の中にあるものをオリジナルで表現するという作り方です。どちらが正解でもなく、やりたいようにやるのが良いのです。

 

毎日クレヨンで自由に描く時間がある園ですが、絵や字がどんどん上手くなっているのを見ると、毎日の積み重ねが大事なんだと感じました。そして、絵に関しても字に関しても、書きたいから書いているうちに上手になっている感じがします。

 

最後のプロジェクトは字を書くプロジェクトになっているというのは、もうすぐ小学生になるこの子たちにとって、それが一番興味があり、能力的に適切だからです。少し頑張ればできるようなことに興味が出てくるものです。

 

 

2人セゾン

2人で一つの作品を作る。これも自由です。一緒に作る喜びを保育園で知ったんですね。主体的・対話的で深い学びになっているようです。2人で考えながら、何をどう作るかを話し合いながら進めています。

 

 

ろくろ首革命

いつの間にか1人の周りにみんな集まってきました。これは、お化けの絵本です。仕掛け絵本になっていて、ろくろ首の首が伸びる仕掛けになっています。他にもお化けが隠れているのを見つけたりと様々なギミックが仕掛けられている絵本だったので、みんな驚いています。

 

平面で作っていたのに立体でも良いんだ、仕掛けがあっても良いんだ、オリジナルの作品でも良いんだ。そんな新鮮な発見がみんなの中に起こったのがわかります。

 

この「ろくろ首革命」によって、みんなの中での常識が良い意味で破壊され、創造性が発揮されていきます。難しい言葉で言えば「破壊的イノベーション」が起こったのです。

 

難しい言葉を使いたがるのは専門家の悪い癖ですね。すみません。簡単に言えば、この後大きな価値観の変化が起きますよ、ということです。